【第20話】金回り経営の実践手順
金回り、と聞くとどのような印象をお持ちでしょうか?
銀座や六本木、新宿あたりで羽振り良く遊んでいるようなイメージでしょうか。金遣いが荒い事を思わせ、あまりいい印象の言葉ではない様に思います。
しかし、事業経営となれば話は別です。金回り、資金の回りが良いことはとても重要な視点です。
それにもかかわらず、やはり多くの経営者方は「売上高」が一番気になるようです。そしてその結果としての「利益」、最後に資金繰りの観点から「金回り」、といった順番でしょうか。
しかし、事業を企てていくという経営の観点から考えれば、この順番は間違いと言わざるを得ません。利益や金回りが売上高の従属的な変数に位置づけられてしまっています。
では、本来、どのような順番で考えるべきか。。。
それは金回り、利益、売上高という順番です。資金を上手く回すことを出発点にして有効な打ち手を考え、その結果生み出される利益を目標として、必要な資金回転として売上高を企てるという順番です。
売上高を出発点に考えてしまっていませんか?
今一度、ご自身の意識を問うてみてください。
ビジネスで打ち手を展開するとは、お金が手元から離れることを意味します。ですから、事業経営においては“金回り”という言葉をあえて使うことに利点があります。
お金を使う瞬間に、一旦、手元から離れるけどもっと大きくなってしっかりと手元に帰ってくるんだよ~、必ず回収してみせる。。。という意識が働くのです。
ところが、お金を使う瞬間に、資金回収意識が低く、お金を使うことそのものが目的化しているような場面に遭遇することもあります。
工場を増設したい、店舗を新築したい、広告を打って販売を促進したい。。。これらは、是非、やっていきたい事です。
しかし、その後ろに資金回収の意識があるかないか、その回収に要する期間はどの程度なのか。表面的には同じ事に見えても、こういった意識があるかないかでその取組は似て非なるものなのです。回収の筋書きの無い資本投下、投資は浪費でしかありません。
そうは言っても、どのように考えればよいか。金回り意識という意味では大きく一つですが、実務的には二つの金回りを考えなければなりません。
最初の金回りは、正常営業循環です。仕入れして、商品にして、販売して、売り上げになる。この一連の動きに対する支払や入金がどのようなタイミングで行われることになるか、そしてこの一連の動き一回でどのように資金が増えるか。この増分が固定費回収や利益として積みあがっていきます。回転期間という意味ではいわゆるキャッシュ・コンバージョン・サイクルです。
もう一つの金回りは、設備投資です。こちらの金回りは設備投資の回収なので、期間で考れば何年という単位になります。一回の意志決定の影響がとても大きいので、持つ・借りる、支払方法、資金調達と返済を一体的に検討することが必要です。
企業の専門化・分化の流れを受けて、初期投資を端的に抑制しながら新事業を立ち上げていくことができる時代になっています。
この変化は、必要な機能を自社で保有しなくても、他社から調達しながら事業を営んでいけるという事です。
これはビジネスモデルの変化と捉えることもできますが、認識を新たにするという意味において、これまでとは事業資金の使い方が変わってきているという解釈の方が重要です。
事業経営という生業自体が常に変化を続けています。そして、資金の使い方は産業の実態よりもはるかに大きな変貌を遂げており、そこに気づいている事が肝要です。
外見は同じように見えても、中身としての金回り設計が異なれば、全く違う産業なのです。
御社の金回り設計はイマドキですか?