【第235話】新事業立ち上げと投資回収の工程戦略

構想に1年、技術的検討から詳細設計にもう1年程を要して、独自性高い新たな商品ができ上がりました。そして、渾身、販売を開始したところ、WEBサイトや広告を見ていただいたお客様から大変ご好評いただき、販売が順調に立ち上がり始めました。

 

また、とある難しい新製品開発に取り組まれ、ほぼ完成に漕ぎ付けた社長は「研究開発費の累積が〇千万になりました。今年の株主総会にいい報告ができます」とのこと。研究開発投資を極めて積極的な経営指標と考えておられます。

 

こうした創意工夫、新事業の立ち上げ、新商品の開発…といったことは、当然のことながらおカネも時間もかかることです。

 

このため、下請け的に事業を展開されている経営者からすると、「そんなことできるおカネがあって羨ましい」、「忙しさがカネになってくれるならいいんだけど」、「ウチにはそんなことできる社員はいないよ」、といったグチにも似た実情が発せられるものです。

 

簡単そうにも聞こえますが、新事業、新商品、新サービス…といったことを商売のレベルに仕上げるというのは、とても大変なことです。これは言わばルートさえも分からない登山のようなもので、その途中にあっては、常に「登り切れるのか…」という疑心暗鬼との戦いが続きます。

 

独自性高い自社事業、特徴ある独自商品・サービスというのは、必ず「生みの苦しみ」の先にあるものです。グチっていても生まれませんし、呑み会で「いい商売あるよ」と紹介してもらえるようなものでもありません。

 

こういった創意工夫をビジネスに仕上げるということから考えた時、しっかりと念頭に置かなければならないのが「投資回収」です。

 

新商品を創って売れ始めた…と、損益計算書の売上利益を見て喜んでいる場合ではありません。それは、まだ途中経過であって、真に経営者として喜ぶべきは、開発投資を回収した時です。

 

常々、「経営は投資である」とお伝えしています。真に世の中に貢献し、その結果として高収益を実現しようとするならば、「まず先におカネが手元から離れて、その後、もっと大きくなって返ってくる」という投資構造を理解しなければなりません。そして、この投資を繰り返すことで拡大再生産の道を歩むのが企業成長の王道です。先行的な努力投資なしに、何かリターンを得られることなどないのです。

 

この投資に際して忘れられがちなのが、「投資回収の“期間”」です。これが長いとリスクが高いことになりますし、短いとリスクは低いことになります。

 

ちょっと考えればわかることですが、投資回収期間が短い、数か月程度…とは、何らかの商品を仕入れてそれを販売する…というレベルです。これは、ほぼ通常の営業循環であって、ここでいう経営投資とは投資回収に数年を要するレベルということです。

 

では、投資リスクが投資回収期間で測れるとするならば、どういった時間感覚を持って投資にあたれば良いか…ということが命題となります。

 

それはともかくとして、融資期間が設備資金10年以内、運転資金7年以内…。経営者であるならばこんな感じのことを耳にしたり読んだりしたことがあるはずです。

 

あるいは、資金調達を投資ファンドに相談にいくと、投融資スキームとして社債型の融資で満期7年といったことを勧められます。

 

こういった社会的な契約スキームというのは、これまでの“経験”に拠っていると気付けば、これは先人たちの知恵であり、身近なビジネスヒントです。

 

工場、建物といった大型の設備投資は別として、「事業開発の投資回収は7年以内」といったことが見えてきますし、それを全体工程的に考えれば、「最初の3年程で事業を構築して販売を開始し、7年目までには利益で開発投資を回収し、その先3年分の累積利益が投資リターンを生み出す――、という10年シナリオ」が見えてきます。

 

これができるようになれば、あとはこのプロジェクト単位を複数本、平行同時的に立ち上げれば良いこととなり、3年後には「毎年、新商品…」の会社になれる訳です。

 

石の上にも3年、まず3年以内に一つの事業を構築しきる意識が大切です。これをお読みいただいている経営者ならば、今、既に新たなビジネスの構想をお持ちでしょうから、標準の3年を短縮して1年程度で実現することを目指されてはいかがでしょうか。

 

先行努力、投資意識を持って経営にあたっていますか?

独自性開発の山に期間意識を持って登ろうとしていますか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム