【第19話】違いを生む事業目的の設定法

「売上向上のために〇〇事業に取り組んでいきたいと思うのですが、どう思いますか」…というご相談パターンは極めて多いかと。

 

新事業とは、商品・サービスや販売先が、これまでと異なるということ。ですから、新事業進出とは新しいトレーニングの始まり、筋肉痛は必至、気合いを要する難行苦行です。

 

目的意識の持ち方次第で、対象となる顧客層や生み出していく商品・サービスはとても違うものになります。ですから、こういったご相談の際、まず「この事業を通じて何がしたいですか、事業の目的は?」とお伺いしています。

 

無論、次なる収益軸の立ち上げ、儲けへの打ち手な訳ですが、この事業の結果もたらされるであろう社会的大義に対する考え方であったり、食い繋ぐのに必要といった切実な事情など、“目的”をお聞きすることで、より深くお気持ちを知ることができます。

 

この質問は何とでも答えられるだけに、しっかりとした思考的骨格の仕上がり具合がハッキリと分かってしまいます。

 

そして、その答えの中にとてもとても重要な要素が含まれているか否か。それは、お答えいただいている事業の目的が「本当に自分で設定したものかどうか」という点です。言い換えれば“主体性”の強さです。

 

こういうと「自分で考えたに決まっているでしょ」と言われそうですが。。。実はご本人も気づかないうちに、そうなっていない事が往々にしてあるのです。聞きかじりの問題意識で、その分野の実務能力・経験も無しにビジネスを立ち上げられるでしょうか。。。

 

例えば、昨今ならば、少子高齢化、過疎化、経済の活性化、後継者・技術者不足、労働規制の強化、情報セキュリティ、エネルギー・環境。。。こういった日々、新聞などで目にする既に顕在化した“問題”の類を事業目的の中心に据えてお話される方の多くは、顧客不在という意味において外から示された事業目的に乗っかっている可能性が高いと考えられます。

 

原因は、事業のネタや顧客ニーズを探すうちに、いつの間にか既に顕在化した“問題”を顧客ニーズだと勘違いしてしまった事にあります。問題があるのだから何らかの市場性はあるだろうと。。。そもそも人と同じ目標に安堵しているようなら、事業経営者は務まりません。

 

こうならないためにも、自社の強みから事業発展の方向性を模索することを強くお勧めしています。強みを育てるためには時間もお金も精神負担もかかります。ですから、強みとは自らの意志の方向性と量を示す、いわば主体性を表す重要指標なのです。

 

事業を営む以上、自社の強みと顧客ニーズとの接点領域で勝負する以外に道はありません。事業経営者の事業目的の中心は「お客様に応える」ことです。我々はお客様の為に働いています。お客様という生身の人間を相手に商売をさせてもらっているからこそ、腹の底から力が沸いてくるのです。

 

事業を行う上で大義は不要、と申し上げているのではありません。そういった大義の御旗の下に、しっかりとご自身で設定した事業目的を持ちましょう、と申し上げています。自社の事業活動を通じて事業目的に向かっていく、その結果、最終的には公に利益がもたらされる、という文脈です。

 

知らず知らずのうちに、外から示された目的を自身の事業目的と勘違いし、単にそれに乗っかっている場合がある、といことに気が付かなければなりません。そして、その代償は後々とてつもなく大きなものになっていきます。

 

自ら考える事を放棄し、外から示された問題を鵜呑みにして事業目的を設定しているとどうなるか。いずれかの時機、ふと我に返った時、自律的に経営にあたってきたつもりの自分が、実は他者が設定した目的のために働かされてきたことに気付く瞬間がやってきます。

 

このような空虚な思いに堕ちないためにやるべき事はたった一つです。世の中の顕在化した問題はあくまでも参考としつつ、ご自身が顧客に対して役立つ方法を考え抜き、その活動を通じて実現したい自社らしい未来像を事業目的として設定することです。

 

仮に外から示された目的に賛同して乗っかるとしても、自社独自の顧客へのお役立ち方法論という手順を通じで、自社らしい事業目的に置き換える一手間が絶対に欠かせません。

 

御社の事業目的は本当にご自身で設定したものですか? 自社独自の未来像を見据えていますか?

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