【第237話】何を売っているのか…機能売りと提案売りの商売の違い

「売れないんです。いいモノなんですが…」、「売れ行きが曇ってきまして…」、「値引きしても反応が薄くなってきまして…」といったことは、永く経営をしていれば絶対にいずれ経験することです。

 

だからこそ、こういった状況というのは決して恥ずかしいことではありませんし、むしろ「まずは、良くここまで来たもんだ」と冷静に客観的に、これまでを喜んでみる一呼吸が大切です。

 

当たり前のことですが、順調に成長を遂げてこられたように見える企業でさえ、いくつもの新製品・新サービスでつまずいているものです。そこから、挫けずに、引き下がらずに、歯を食いしばって…、「深追い戦略」ともいえるような努力を続けてきたからこそ、今があります。事実、ある有名なロングセラーのお菓子は、売れ始めるまでに10年を要しています。

 

こういった踏ん張っている状況というのは、イベントの盛り上がりで「挑戦しよう!」といった、キラキラした華々しいものではありません。むしろ「これ以上、どう頑張ればいいんだ」、「もう手詰り」、「ムリ、限界…」といったことです。

 

運動で例えるならば「ジャンプ」のようなものではなくて「スクワット」。重いバーベルを担いでしゃがみ続けているような状況です。足がプルプルしてからの勝負です。

 

こうした限界状態にあるからこそ、頑張り方が大切です。ところが、多くのプロジェクトがこの頑張り方を間違い、再び立ち上がってくることができません。

 

面白いことに、限界状態にあって顕著なのが「お客様が見えなくなる」ことです。とても辛い状況なので、外に意識が向かなくなるのです。あるいは、外に意識が向いたとしても「上手くいかない理由探し」を始めてしまいす。

 

崖っぷち、それどころか谷底から這い上がってきた社長というのは、この限界状態から生還してきました。そこには法則があります。それは、売れない理由を市場環境のせいにせず、「持てる能力・機能をお客様の価値に転換して提案した」のです。

 

とある社長はこう仰います。「この商談を失注すれば会社が潰れる。そういう状況になってからがオレは強いんだ。お客様への提案が浮かぶんだよ」と。

 

「足りてる時代」、モノを売るのではなく体験を売る…といったことが実しやかに言われています。あるいは、モノを売るのではないというスタイルから、提案営業、ソリューション営業…といった営業姿勢も叫ばれます。しかし、上手くいっている場面があまりにも少ないのはなぜなのでしょうか?

 

その理由はとてもシンプルです。準備が浅いのです。まだ、能力や機能さえあれば売れていた「足りてない時代」の意識のままなのです。

 

現有の能力や機能を売れる提案に仕上げるためには、お客様が欲しいと思える価値に“転換”しなければなりません。それこそが“提案化”の中身であり、この転換が不十分なまま、これで「提案か?」という生煮え状態でお客様に持っていくから売れないのです。

 

その“転換”のキモとなるのが「用途開発」です。体重計はヘルスメーター、健康を測りましょうと提案しています。血圧心拍計は今や長寿計ですし、自動車保険は事故解決を売っています。

 

ゴルフ場のディーグラウンドの脇に設置されている「ボール洗い器」の製造メーカーは「パーエイド(Par Aide)」です。「ボールをキレイに洗って、パーを取りましょう」と提案しているのです。

 

用途に転換して提案化できていない状態で、能力や機能のままで販売しようとすると、セールストークが、その特徴的な違いの説明に終始してしまうことになります。「良いモノなのでいろんな使い方ができます」という訳ですが、これは言い換えればお客様に用途を考えろと丸投げしているに等しいと言わざるを得ません。

 

セールストークの語尾を「いかがですか?」としただけで提案営業になる訳ではありません。提案とは、お客様のある目標を達成するための手段のご提案ですから、目標とするところはお客様と一緒です。だからこそ、話を聞いてもらえるということをお忘れなく。

 

能力・機能をお客様への提案に転換していますか?

お客様が手に入れる価値、能力・機能の用途はハッキリしていますか?

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