【第238話】見えないけど在るビジネスを具現化していくための手順原則

「手詰まり感がありまして…」ということで、新事業の検討会議にお呼びいただきました。当然のことながら、新たなビジネスを企てていくのは簡単なことではありません。しかし、存続発展を考えれば、いずれ取り組んでいかなければならないことでもあります。

 

多くの経営者や企業がこの道を模索する過程で、どうしても陥りがちなことがあります。それは、「見えていること」に引っ張られるのです。

 

見えていることを整理すればするほど、いつもの答えに収束してしまい、二進も三進もいかなくなってしまうのです。これは言い換えれば、同じ思考パータンの中で堂々めぐりを繰り返し続けている状況といえます。

 

そうなってしまうのも無理はありません。それは「今」というのが、ある意味で一種の「均衡」にあるからです。そして、新たな取り組みを行うということは、図らずもこの今の「均衡」を自ら崩しにかかることでもあるからです。

 

これは、とても怖いことです。企業の存続というのは、そこで働く人、関係する取引先、出資者などの、一種の生き死に関わる問題です。このため、「死にたくない」という恐怖心から、絶対に成功できるはずの「見えていること」に引っ張られていくのです。

 

こういった心理状況で新事業の検討を進めるとどうなるか…。仕事をもらおうとする意識から、「言っていただければやります」というテーマを掲げただけの請負型のビジネスになってしまいます。

 

このような能力をそのまま売るビジネスというのは、お客様の側に仕様があるという意味で、差別化の源泉は能力の高さと価格だけになってしまいます。言い換えれば、高い能力を安く売る…ということです。これがどういった結果をもたらすことかは説明を要しないことと思います。

 

このことは、新事業の検討にあたって、その入口となる精神状態、考え方そのものを変えない限り、また同じような結果、それも望まない結果にたどり着くことを意味します。

 

こうした状況の時、とても大切なことは「原点回帰」です。そもそも論として商売は「あなた」のためにあるのではなくて「お客様」のためにあるものです。お客様が在るからビジネスが在るのです。その結果、生かされるという順番なのです。

 

そういった原点的な思考に立てば、見えてくることがあるはずです。新事業とは世の中への貢献、お客様への貢献…、自分たちが生かされるために、どのように自分たち以外に貢献していくのか…を考えていかなければならないということです。

 

そういった視点でもう一度世の中を見回すと、不思議なことが起こります。ビジネスチャンスがもう既に「在る」ことに気付きます。そして、その新たなビジネスは、能力が高い、設備が新しい…、そういったこととは全く別の次元に在ることにも気付くはずです。

 

なぜこれまで見えてこなかったかといえば、自分たちの能力・技術や設備といったことが中心となり、お客様の心情に目が向いていなかったからです。能力や技術、設備といったこと自体をビジネスと捉えており、それらをお客様のために「どう使うか」に意識が及んでいなかったのです。

 

ビジネスには種類かあります。能力・技術や設備そのものを売ろうとするならば、それは一種の労働提供という代行業であって、お客様の代わりにやるだけですから、付加価値は「お客様がご自身でやるよりも安い」ことからしか生まれない構造にあるということです。

 

一方、「応用」によって生み出されるのが付加価値です。お客様のために能力・技術や設備の使い方を考えることで新たなビジネスが生まれます。

 

実際、ITやプログラミングの世界でも、それらの技術が高いことも大切ながら、それらの技術を応用したものがビジネスとして大成していることがお分かりいただけるものと思います。

 

このように応用化したビジネスは、とても大切な特徴を宿します。それは、お客様も喜び利益の出る価格でビジネスが成り立つということです。

 

能力や設備は満たされることがあったとしても、お客様のために「応用」された新たなビジネスは常に尽きません。だからこそ、こちら側のビジネスに挑戦していくことが大切です。

 

自分たちの未来の前にお客様の未来を描いていますか?

持てる能力・技術・設備をお客様のために応用しようとしていますか?

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