【第169話】経営者として真の達成感を得るために欠かせない挑戦要素
「永く機械商社の仕事をしてきたけど、商流が変わってきている。お客様の方でメーカーとの直取引ができるようになってしまえば、この仕事はマルッとなくなるかもしれない…と、常々社員に言っている」という社長。
業態変革に向けて、社内に企画開発部門を設け、独自の企画商品を世に打ち出し、最近はメディアなどにも良く取り上げられています。
「大変だけどね」と言いながらも、新しい“達成感”をお感じの様子。
一方、とある会長はこう言います。「営業マンが値引きしちゃうから、利益が出ないんです。なんとかならないですかね」と。売れてはいるものの、談交じりの会話の裏には本気の焦りが漂います。
経営者方と飲んでいると、面白いことに「これ、ウチだったら〇〇円にする」といった話になることが往々にしてあります。
つまり、商品そのものやサービスによる付加価値化、そして提供方法やスタイルといった改善を付して、「オレだったらもう少し高く売れる」という“価値”のことを議論しています。
一方、こういった会話の中にあって「もっと行ける」と“価格”で売ろうとする社長もいらっしゃいます。
“価値”を重視する社長と“価格”を重視する社長。どちらが正しい経営かといった議論はさておき、概していうならば“価値”に敏感な社長ほど、経営を質的に伸ばしておられます。
なぜ“価値”に軸足のある社長が経営を質的に伸ばすか…を考えてみれば至極当然のことだということが分かります。
例えば、これまである程度売れていたものの売れ行きが怪しくなってきた時、“価値”を維持しようとする社長は、商品そのものやサービス、提供方法にいたるまで、頭を巡らして、その商品の“価値”そのものを高めようとするでしょう。
片や、“価格”で売ろうとする社長は、商品そのものやサービスの“価値”に立ち返らず、もっと値引きして売ろうとするでしょう。あるいは、その商品をあきらめて次に売れそうなものを探すでしょう。つまり、安さで売る経営は行き詰まった際に展開できる打ち手が基本的に「もっと安く」しかないのです。
もう少し補足すれば、「売れた」には二種類あるということです。それは「“価値”が認められた時」と「“価格”で買われた時」ということです。これは、お客様からの「安いね」のニュアンスとなって現れます。
「これ(“価値”)がこの“価格”なら安いね」は、商売人にとって最高の承認であり、頑張ってきて良かったという「達成感」に浸る瞬間でもあります。
ところが、同じ売れたでも、製品・サービスなどを理解される前に「安いから(“価格”だけ)」という購入理由を示された時には、売れたけど悲しい?という何とも不気味な無力感を味わうことになります。
仕事を通じてある種の「達成感」を感じられるのは、“価値”が認められた時であって、“価格”で買われた時ではないということです。
“価値”で商売をしようとするならば、大切なことは当然のことながら「値付け」です。これは“価値”そのものを創るのと同じくらい極めて重要なことです。商売をする側からいえば、最終的に決まった値段そのものの水準というよりも「値段に対する基本姿勢」ということです。
“価値”で経営している社長は、日頃から“価値”を見極める訓練をしているので、「これ、ウチだったら〇〇円にする」という極めて合理的な一点を、原価を算出するまでもなく、感覚的に言い当てることができます。
“価値”で創った売上と“価格”で作った売り上げは、単位は同じ「¥」であっても、その意味は全く異なります。仕事をしていて「達成感」が感じられないならば、それは、“価格”で経営してしまっているからかもしれません。
御社の事業に「達成感」を感じていますか?
お客様に“価値”をお届けすることに本気で取り組んでいますか?