【第168話】融資申込の計画書で事業が成長しない構造的な理由

「来年度の計画の策定で死にそうです…」と疲れながらも、企み顔が印象的なクライアント企業の経営者。来年度の計画だけでなく、これから数年後をにらんだ中期の戦略策定にも着手されています。

 

御社におかれましても、今頃は理想と現実の狭間で、予算と実績の差を目の前にしながら、この先に思いを馳せていらっしゃる時期かと思います。

 

考えたことを経営陣で共有したり、従業員に伝えたりするために。そして何よりも「このままではダメ、次に向かって行くぞ!」という強い意志を示すためにも、計画化は極めて重要な経営者の仕事です。

 

計画化というのは、ご自身の考え方をまとめることが主たる目的ではありつつも、経営者であるならば、それを誰かに“見せる”ことを前提として策定しています。ここに一つ、大きな問題が含まれていることにお気づきでしょうか?

 

それは、「誰に見せるつもりで書いているかによって、計画の色合いが違ってきてしまう」という点です。

 

当然のことながら「事業計画」を誰に見せるか…、といえばご自身、経営陣、従業員という社内メンバーのためです。事業計画はそこで働くメンバーのための幸福、延いては客様への貢献につながっていくものでなければなりません。

 

ここで「そんなの当然でしょ」というご意見であれば嬉しい限りです。ところが、多くお見受けするのが、「社内向けの事業計画書は3ページだけなのに、銀行向けは冊子になっている」というケースです。

 

つまり、「事業計画が銀行向けに策定されている場合」ということです。そして、特に問題なのが銀行への「融資申込の事業計画書」の場合です。

 

いまだに、事業計画は「融資を受けるために銀行に提出するもの」という感覚の経営者が多いことに驚きます。そしてハッキリと言えることがあります。そういう意識レベルの経営者が経営を本物の成長発展に導いていくことができる可能性は皆無に等しいと。

 

なぜそう言い切れるかといえば、その理由はとても簡単です。「その事業計画は借入金が返済できる可能性の最も高いシナリオが選択されてしまっている」からです。

 

「返済できる可能性が高いんだったら、いいじゃない。何が悪いの?」という声が聞こえてきそうです。ですが、この考え方の構造的な盲点と、その誤解がもたらす取り返しのつかない結末について、今の段階でしっかりと気づいておくことが大切です。

 

つまり、その計画は「御社が最も目指すべきシナリオになっていない可能性が高い」のです。言い換えれば、「借入金返済の可能性を高めるために、御社が本来的に目指すべき成長シナリオを捨てている」可能性さえあるということです。

 

返済の可能性が高いシナリオというのは、十中八九そうなるだろうと誰もが思う…という意味ですから、言い換えれば“フツー”ということです。御社らしい独自の成長発展というのは、“フツー”のことではないはずです。

 

あえて一般化するならば「借金で会社を大きくすると、返済可能性が優先されるため、売上は大きくなったとしても“フツー”の会社になりやすい」のです。これ、今の時代に合っていますか――?

 

経営とは常に挑戦事です。ですから、折角の取り組みであれば、御社にとって本質的に「なすべきこと」であって欲しいのです。理想を目指して、もがきまくっていただきたいのです。

 

「じゃあ、どうすればいいの?」というご質問に対する答えは、とても単純です。「未来を借金で先に買うのではなく、先に利益を出して未来を築いていくことを考える」のです。そもそも挑戦するのは、「借金」ではなく「理想の未来」のはずです。

 

先に成すべきは「利益を出せること」であって、ご自身で稼ぎ出した利益を再投資して、未来を自ら創っていくという順番意識が大切です。

 

そうすれば、例え歩みは小さいように見えたとしても、御社らしい道を歩むことができるでしょう。そして更に、利益の再投資によって、複利的に事業を拡大していくことも可能です。

 

事業計画は御社の目指す理想に向かっていますか?

そのために、借入検討以上に利益捻出を考えていますか?

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