【第170話】筋なき“ポジティブ思考”が会社を滅ぼす!?

「経営者は“筋”で判断することが大切」。これは大変懇意にさせていただいている社長がよく口にされることです。

 

社長の仕事は「決めていくこと」であるから、栄枯盛衰の世界で永く第一線に立ち続けるためには、その“筋”こそが、とても大切という訳です。

 

年の初めのこの時期、多くの経営者の年頭の所感をお聞きします。さすがだな~と頭の下がる思いでお聞きしているのですが、中には少し違和感を持つお話もあります。

 

その違和感とは、一見前向きな取組みのようでありながら、何かから逃げているような感じ…、とでもいうのでしょうか。その企業の大切な“筋”から外れているのでは?と感じるのです。

 

例えば、「新たに〇〇事業を始めます」、「〇年までに△地域への販売を目指します」、「××企業とのアライアンスを決めました」といった感じです。

 

いかがでしょうか、一見前向きでポジティブな話に聞こえるのではないでしょうか。

 

ですが、「本業が手詰りなんだな」、「今の地域で負け始めたかな」、「メーカーであり続けることをあきらめて下請けになるんだな」といったことは、すぐに分かるものです。

 

なぜ分かるのか…、それは不思議な特徴があるからです。社長が「新たな取組み」の理由を妙に理路整然とキレイに説明されるからです。

 

それもそのはずです。これまでとてつもないほどの自問自答を繰り返して、取組み理由という名の“筋”を外れることへの論理が形成されています。ですから、理路整然とキレイに説明できてしまうのです。

 

経営者にとって大切な“筋”に対する態度は、前向き・ポジティブであることが良いとされます。いわゆる“ポジティブ思考”です。

 

ですが、事業経営における“ポジティブ思考”とは、“筋”を外すことについて、積極的な態度であろうかのごとく文脈を整えたり、まずやってみなければ…といった妙に楽観的で思考不足の行動とは違います。

 

“筋”から外れる際、取組みの理由がとてもキレイで整っている場合というのは、ほとんど確実に“筋”から外れる尤もな理由に過ぎないからです。

 

そして、この問題はその先です。キレイな文脈の先には、今よりももっと厳しく儲からない世界が待っているということです。

 

そんな社長の「心ここにあらず」は、すぐに従業員に伝わり士気も下がり、一気に会社が傾き始めます。

 

本物の社長が放つ後光というのは、理想を描き、その達成を信じ、あきらめず着実に努力を積み重ねていくという持続的で一貫した態度によるものです。これが“筋”の正体でもあります。

 

大丈夫かな?みたいなところがあったとしても、譲れないものを持っていて、その実現を信じて生きている。だから社長はカッコいいのです。

 

その時々で一見ポジティブに見える選択肢になびいたり、本質で考えることを放棄して取組み理由だけをポジティブに整えたところで、そのようなことから事業の核となる強さが生まれてくることはありません。

 

苦しい時もあることは重々承知しています。だからこそ、そういった際にお伝えしているのは、今の“筋”から逃げずに踏ん張ることです。そして、多くの社長が踏ん張りきっていく姿を目にしてきました。

 

その苦しさから逃げて、“筋”から外れることはいつでもできます。ですから、もう一踏ん張りするのであれば、脇道ではなくその“筋”で踏ん張ってみるべきなのです。

 

“ポジティブ思考”とは目先の一つ一つの決定について積極的であったり楽観的であったりすることではなく、もっと長い時間軸で考えるべきことです。“筋”に適わないからやらない。これも立派な“ポジティブ思考”なのです。

 

その「新たな取組み」は“筋”のど真ん中を貫いていますか?

“筋”に対して長期的に一貫してポジティブですか?

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