【第171話】高収益を生み出す独自市場の見出し方

新事業を検討するにあたり、まず何から考え始めるでしょうか。あるいは、既存事業を立て直して売上・利益を増やしたいとしたら、どんなことを考えるでしょうか。

 

多くの経営者は、新聞、ビジネス雑誌、ネットなんかで情報を集めてみたり、業界の分析データを購入したり、〇〇白書を読んでみたり、はたまた知人の経営者に話を聞いたり…、といったことにヒントを見出そうとするでしょう。

 

そして、「ロボットか…」、「これからはAIだ」、「自動車のEV化と自動運転化が進む」、「人生100歳時代の働き方」…、ビジネス雑誌の表紙みたいなテーマが新事業のテーマや経営計画の環境分析に並ぶことになります。

 

新聞や雑誌で取り上げられていることというのは、いわゆる「トピックス」です。話題になるコトというのは、最先端の研究動向や新たな社会的課題といった、端的な両極だけが切り出されて伝えられています。

 

しかし、どうでしょうか。私たちの毎日のビジネスというのは、こういった市場なのでしょうか。ビジネスになっているのは、果たしてこういった両極のコトでしょうか。

 

大手IT企業は売上高対研究開発費比率で1割を超えているところがザラです。つまり、売上の1割くらいを燃料として研究開発に投入し続けない限り、最先端を維持することはできない、ということです。

 

そして、社会的課題が顕在化しているのは、ビジネスとして上手く市場メカニズムが働かない市場領域だからです。経済学で呼ばれるところのいわゆる「市場の失敗」であって、大抵は公的セクターが税金でその対応にあたっています。

 

こういった市場領域に、ビジネスというやり方で参入すれば、市場があるので売上にはなりますが、利益が出るかと言われれば、事業運営に一定の制度や補助が必要だという時点で、ほとんど困難なことは明らかです。

 

つまり、市場リサーチで見えてくるトピックスというのは、確かに「既に見えている未来市場」ではあるのですが、そこは売上にこそなったとしても、利益を上げていくのは大変難しい市場なのです。

 

我々が目指している高収益市場というのは、参入後いずれ10億円が見えていて利益率10%超えが達成できるような市場。その利益を再投資してその先に100億円が覗けるような規模感です。

 

そういった市場というのは、トピックスのような両極ではなく、その中ほどにさりげなく在るものです。さらにトピックスになるようなメガ市場そのものではなく、そこから派生するサブ市場だったりもします。

 

こうした要件を満たす市場というのは、一般的な市場リサーチからは全く見えてこないのが通例です。では、どう考えて新たな市場を見出していけばよいのでしょうか?

 

それは「時流の変化そのものではなく、その時流によって起こる“歪”の方に目を向ける」ことです。

 

例えば、ロボット化が進めば、ロボットという巨額投資の採算が成り立つかどうかで、部品市場や組立市場の棲み分けが進む。自動車が自動運転になれば免許不要、所有や事故の概念が変わる…といった具合です。これらはとても大きなビジネスチャンスです。

 

大切なことは御社独自の市場を見出すことであり、それは、大きな時流に御社の強みを掛け合わせることで見えてきます。ちょっと先の未来のことにもかかわらず他社と御社の境界線がクッキリと見えてくるはずです。これこそが、御社が進むべき独自市場なのです。

 

時流という名のメガ市場に乗っていくというのは、波に乗って経営することでもあり、事業を成長発展させていくために大切なことではあります。ただし、これが大波であればあるほど、実は乗り方が難しく、沈んでしまうリスクも高いものです。

 

時流自体に目を向けた経営は、経営の筋として一見合理的なのですが、実は過当競争の激戦区だったり、元々、採算が成り立ちにくい領域だったりと、とても大変です。

 

御社にしか見えない独自市場があって、そこでは、社長も従業員も、そしてお客様も一緒に幸せになれるのですから、そこを目指さないのは何とも勿体ないことです。

 

時流そのものを市場と捉えてしまっていませんか?

御社の角度からしか見えてこない“歪”を見ようとしていますか?

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