【第182話】儲からない事業に飲み込まれないために欠かせない思考軸
「我々、経営者は、リスクを取って事業を営み、従業員を雇用し給与を支払い、そして税金を納め…、社会を下から支えている」という文脈のお話を耳にします。
実際にそうなのかもしれませんが、「下から支えている」というのは、いささか謙虚な言い回しであって、経営者というのは経済主体そのものですから、世の中の最前線に立つ誇りを胸に謙譲の美徳をもって「下から」と表現されています。
そして、こういった文脈における「下から」というのは、納めた税金で何やってくれているんだ…と、「お上」への苦言を含んでいたりすることもあります。そのため、「お上」の対極にいる自らの存在を「下」とすることには、実に深い意味合いがあります。
さて、「お上」による事業とは、民間では手に負えないような壮大な事業や、社会的に必要だけど経済性が成り立たないような事業です。こういったことに対して施策や制度が検討され税金等が予算配分されて投下されます。
一方、民間における事業とは経済活動です。すなわち、経済主体として経済活動を通じてお客様や世の中に貢献すると同時に、経済的に自立して、そして税金を納めるということです。
ここでお伝えしたいのは、「事業には種類がある」ということです。このことを前提とすれば、「事業を始めるにあたっては、その種類を見極めておくことが大切」ということです。
言われてみれば当然のこと…とお感じかもしれませんが、この「事業の種類」というのは「業種・業態」といった目に見えることではありません。それは、「考え方」だから分かり難くて、それを知らずに多くの経営者が低収益の側に飲み込まれていきます。
大切なことなのでもう少し補足すれば、「事業には種類別にそれぞれの入口があって、入口を間違うと、その道を戻って一旦出てから、違う入口へ入り直さなければならない」という性質があります。これは、ビジネスを成長発展させていく上で極めて大きなロスを伴います。
だからこそ、独自性の高い新事業や、独立自尊の新展開にあたっては、その種類をしっかりと見極めておくことが大変重要なことなのです。
では、その種類とは…。分類の主軸となるのが「売上の開発度」です。つまり、売上そのものをご自身で開発したか、あるいは、誰かの予算を配分されたかの違いということです。この「売上の開発度」の違いを生むのが、経営者の考え方なのです。
売上が欲しいと考えている経営の場合、当然のことながら「どこかに売上はないか…」を“探す”ことになります。そして、その売上という名のどこかの誰かのおカネにぶら下がることになります。
一方、利益を出したいと考えている経営の場合、「どうすれば付加価値を生めるか…」を“考える”ことになります。そして、それが独自の市場・顧客を生み出していく。すなわち、売上を開発していくことにつながります。
この極めて大きな経営の質的な違いを生むのは何か。それは、経営者の投資意識の差、リスクテイクに対する意識の違いだということです。
独立自尊の経営を目指して、「売上の開発度」を上げていこうとすれば、開発にかかわる「先行投資が必要」ということです。簡単そうに聞こえますが、この「先行投資」をガマンできるか、目先の売上に甘んじるかの違いが、経営の質を決定的に別つのです。
「ウチはおカネないから」などと言わないでください。ここでいう「先行投資」というのは資金面というよりは、むしろ“考える”という時間面での投資がその本質です。
多くの経営者が裸一貫から今の会社を築かれています。例え今はおカネのパワーを多少使っていたとしても、最初はおカネではなく頭を使って今の立場を築かれてきたことを忘れてはなりません。ビジネスの起点はいつの世もおカネではなく頭、アイデアです。
目先の売上をもらおうとするか、未来の売上・利益を創ろうとするか…。この違いは、事前の努力、先行投資に賭けてみることから始まります。御社の可能性、そしてご自身の経営者としての才覚をもっと本気で信じてみてはいかがでしょうか。
売上を探そうとせず創ろうとしていますか?
御社の未来とご自身の才覚をもっと信じて賭けてみませんか?