【第183話】相容れない二つの市場をどう選ぶかで利益性が決まる

売れるけど儲からない…。これはほとんどの場合、ビジネスの建付け、構造に原因があります。そのため、利益性を高めるというのは、頑張る…などといった気持ちで乗り越えられるようなことではありません。

 

特に、利益性はその市場の特性でもあることから、新展開にあたっては参入する市場の特性について理解しておくことが大切です。

 

ということで、市場の特性についてですが、ビジネスにおけるお客様に対する主張には、「変えてみませんか」と「変えなくていいですよ」という二つがあります。

 

例えば、「この器具を使って腹筋割りませんか?」は「体形、変えてみませんか」と言っています。一方、「コットンのシャツを着てロハスに生きませんか?」は「あなたは変わらなくていいですよ」と言っています。

 

もう少し言葉を換えれば、ビジネスには、お客様に変わることを求める商売と、お客様に変わることを求めない商売という、全く相容れない二つの市場があるということです。

 

変わることを求める商売というのは今と戦うイメージ、変わることを求めない商売というのは今に寄り添うイメージです。

 

この二つの市場における利益性、どちらの方が高いと思いますか?

 

もうお分かりのことと思いますが、「変えてみませんか」市場の方です。

 

これは実に単純なことなのですが、何かを変えることでお客様は新たな便益を手に入れるからです。その手に入れる便益の分だけ、お客様の支払い意欲は高まりますし、よって、価格受容性も高まります。

 

更に、販売の数、市場の規模には上限がありません。今に上積みするのですから、理屈的に言えば無限大ということです。

 

それと同時に、大変なこともあります。この市場での販売は「変えてみませんか」とお客様を説得するのですから、説得のための準備が必要になるということです。

 

一方、「変えなくていいですよ」市場の方はといえば、もうお客様が知っているモノや便益を売るのですから、販売自体はラクといえます。

 

ですが、価格は…といえば、その商品・サービスによって新たに追加的な便益をもたらすことがないため上げにくく、むしろ下げ方向にしか動かしにくい構造にあります。

 

そして、数量はといえば、今の市場規模が一旦の飽和点なので、伸ばすというのが難しいのです。したがって、「ファンを増やす」、「共感を高める」、「ストーリー付けする」…、セールストークがどうしても具体性を欠く感じで社会活動的になりがちです。

 

少しまとめれば、「変えなくていいですよ」市場は売りやすいけど儲かりにくい構造にあるということです。そのため、時間とともに経営が「ひっそり」していく傾向にあります。

 

新展開にあたって、本能的に“違う”と感じながらも「変えなくていいですよ」市場に行ってしまうのは、販売を「ビビッてる」ことに起因します。

 

お客様に「変えてみませんか」と言うのと、「変えなくていいですよ」と言うのとでは、どちらがラクでしょうか?ということです。お客様に「変えてみませんか」と言うのが怖いのです。

 

このため、当たりを避けようとする意識から、どうしても「変えなくていいよ、そのままでいいよ」という市場ポジションを採ってしまうのです。

 

商売というのは、お客様との関係で成り立っています。このことを起点とすれば、お客様に何と言うか…が大事であることは容易に想像することができます。

 

お客様に「変えてみませんか」と当たって経営を伸ばすか、「変えなくていいですよ」と寄り添って経営をひっそりさせるか。

 

どちらが良い悪いという議論ではないにしても、経営として二者択一の問題であり、利益性を支配的に決定づけるということについては、初めから理解しておくことが大切です。

 

御社のビジネスは、お客様に何と話しかけていますか?

お客様に何を「変えてみませんか」と提案していますか?

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