【第181話】絶対に知っておくべきビジネス別の利益構造の違い

「そうは問屋が卸さない」とは、「そう簡単にはいかない」とか、「そんなに甘いもんじゃない」といった時に耳にすることわざです。

 

これをビジネスの面から見れば、「素材業→製造業→卸売業→小売業→消費者」というサプライチェーンの中にあって、かつては卸売業(問屋)がその実力を行使していたことが伺えます。

 

卸売業というのは、商品の流通のみならず、需要変動に対する在庫機能や、取引に係る金融機能を発揮してきました。

 

ところが、製造業も需要に応じてジャストインで作れるようになってきたし、小売業も製造業から小口で直接仕入れられるならその方が安いし、買掛サイトはどうせ短いし、価格情報や新規の納入先はネットで調べられるし…。

 

こういった変化の積み重ねによって、長年、商慣行として定着してきた流通構造は変化し、「卸の中抜き」と呼ばれるようになってから、早20年以上が経過します。卸売業も業種業態の転換を図り、小売業のサポートを強化したり、新業態として卸売小売業といった新業態への転換を図ってきました。

 

さらに、昨今はオンライン小売業の台頭で流通構造の変化が一層進んでおり、かつての商慣行は崩れ、製造業が直販サイトを持つことは当たり前になってきました。これは、「卸の中抜き」どころか「小売りも中抜き」であり、流通構造はこれからもこの方向に着実に変化していくことでしょう。

 

新たな打ち手を企てていこうとすれば、商売の本質に立ち返りながらも、こういった構造変化や潮目を見極めていくことが大切です。

 

実体経済を支えるビジネスには大きく二つの種類があります。それは「作る」ビジネスと「売る」ビジネスです。

 

言わずもがな、そのどちらも大切なのですが、それぞれのビジネスはビジネスとしての根幹、利益を生む構造が全く異なるということを知った上で、ビジネスの方向性を舵取りしていくことが欠かせません。

 

まず、「作る」ビジネスの利益の根源は“粗利”です。例えば製造業であれば材料を仕入れて加工して製品にして販売する。その際の売価と原価の値差、すなわち“粗利”が利益の源ということです。

 

一方、「売る」ビジネスの利益の根源は“手数料”です。口銭といった方が分かりやすいかもしれません。できた商品を欲しい人のところへ作った人の代わりに販売することで利益を得る。仕入値と売値の値差、あるいは販売の手数料が利益の源です。これはいわば仲介料であって、「作る」ビジネスの利益とは質的な違いがあります。

 

少しまとめると、「作る」ビジネスと「売る」ビジネスを利益構造という視点から見れば、全てをハッキリと分けることはできなかったとしても、概ね“付加価値”によるものか、“代理販売”によるものかの違いがあるということです。

 

このことから、「作る」ビジネスは付加価値力の証として“売価”が大事、「売る」ビジネスは販売力の証として“販売数量”が大事というビジネス上の価値観の違いが生まれます。

 

メーカーが小売価格を指示することは再販価格維持行為であり、消費者利益を損なうとして独占禁止法に抵触する違法行為なのですが、そもそも高ければ売れないのですから、昨今のこの価格情報が誰にでも手に入る世の中で、どんな意味があるのかと思います。

 

「作る」ビジネスがそんな制約下にありながら「売る」ビジネスが数量を売ろうとすればどうなるか…。価格は下がることはあっても上がることはありません。

 

高収益を目指すならば、「作る」ビジネスは「売る」機能を強化し、「売る」ビジネスは「作る」機能を強化していくことです。

 

業種・業態といった分類上の垣根など、もうないに等しい時代です。製造小売業というとアパレルのSPAのように聞こえるかもしれませんが、これからの時代を生き抜く企業の条件は「作る」と「売る」の双方を実装した企業です。この方角に向かって舵を切っていくことが大切です。

 

「作る」に軸足を置きながら「売る」を強化していますか?

売る前に売れさえすれば儲かる構造を創っていますか?

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