【第88話】商売繁盛の根本を成す価値提案に対する姿勢
「当社のこの商品、いかがですか?」といった営業トークが、いまだに巷であふれています。それは断じて提案などではないことに、早く気付くべきでしょう。
企業が大きくなるほど、商品開発の部隊と販売の部隊は組織機能上、分化されていくので、大抵の場合、販売の部隊は、出来上がった商品を「売る」部分だけを担当することになってしまっています。
ですから、新商品の販売開始にあたっては、商品開発の部隊から、新商品の機能や特徴などの説明を聞いた上で、販売部隊が売り方を考えて売っていくことになります。
こういった状況を打破すべく、昨今は、開発チームにおけるマーケティング機能を包含強化して、販売チャネルやその先にいるお客様まで想定して、商品開発が進められるようになってきています。
なぜ、企業にこういった動きが加速化しているかについては、その背景にある市場の変化について、もっと突き詰めて考えてみることが大切です。
まず、商売を繁盛させていきたいと願うならば、お客様に欲しいと思っていただける価値を提供し続けることが、前提となることは言うまでもありません。
ということは、商売を続けていくためには、時代に合わせて世の中に提供する価値を開発し続けていくことが必要です。
ですから、事業開発や商品開発にあたっては、お客様に提供する価値について御社なりの考え方・定義が必要になってくるのです。
この「御社なりの考え方・定義が必要です。」という主張については、いつも「本当に必要ですか?」と多くの反論を頂きます。
その場合、「好きな事を細々と続けたいだけならば必要ありませんが、高収益を実現したいならば絶対に必要です。」とお伝えしています。
良く考えてみていただきたいのですが、この足りている時代、モノやサービスを売っていくことがどういうことなのか。。。
例えば、食べ物が不足している時代には、お腹を満たすために食べていたでしょうから、先ずはお手頃な価格で食べられるものが望まれたことでしょう。続いて、ある程度、食糧がみたされてきたならば、美味しいものが望まれ、そして昨今は健康な食事や時間効率的な食事などが望まれています。
御社が「当社の○○は安くて新鮮です。」と売っているその隣で、他社が類似の商品を「当社の○○は健康に良いです。」と言って売っていたとしたら、両社にどういった差が生まれるでしょうか?
御社は未だ「新鮮で安い」を提供価値と考えており、一方、競合する他社は「お客様の健康」を提供価値と考えています。
そうなれば、御社には安価にお腹を満たしたいお客様が集まり、競合の他社には少し値が張ってでも健康に気を使いたいお客様が集まることになるのではないですか。。。と申し上げています。
「おなかがすいたらスニッカーズ」でお馴染みのアメリカ発のハイカロリーなキャラメルチョコレートバーがあります。これはその昔、皆がお腹を空かしていた時代には、空腹対策として販売されていたのでしょうが、現在、TVCMを見ると価値提案がその頃と違っていることが分かります。
TVCMでは「お腹が空いて不機嫌になって周囲に八つ当たりするくらいなら、周りも迷惑だから、スニッカーズを食べて、いつもの自分を取り戻せ」と伝えています。
つまり、販売しているモノは同じであっても、その商品がもたらす価値を時代にあわせて更新しています。
事業開発の核となるのは、お客様に欲しいと思っていただける価値提案を企画することです。御社が、御社の商品が、お客様にどういった価値を提供するかについて、お伝えできなければ、それはお客様にとって提案とは呼べないただの押し売りでしかないのです。
御社が提供する価値は定義されていますか?
それは、押し売りではなく提案になっていますか?