【第87話】「こだわり」を表現して売れる“コンセプト”を生み出す方法

事業や商品に対する「こだわり」がとても大切であることは言うまでもありません。ですが、その「こだわり」を上手に表現して、販売へとつなげられている企業は少ないように感じます。

 

この「こだわり」の有無こそが、企業が単なるマネー製造マシンに成り下がるか否かの分水嶺ともいえます。

 

足りている時代。。。「こだわり」を上手く伝えることが、企業の成長発展には不可欠です。それは、「こだわり」による需要の刺激が、“欲しい”を喚起することで購買行動を駆り立てるからです。

 

刺激-反応モデルといえば、古くからご専門の方々にはお分かりいただきやすいかもしれません。古典的な理論ですが、webやsnsなどといった手段・情報チャネルは変われど、現代においても需要創造の根底となるパラダイムとして有効です。

 

こういった「こだわり」は、事業構築の現場では“コンセプト”設定として検討を進めます。事業構築における“コンセプト”とは、その事業の全体を貫く基本思想です。

 

予め“コンセプト”が明確化されて、そのコンセプトの下で検討が進められていくことが望ましいのですが、実際には、既存事業のテコ入れならまだしも、新事業ともなると“コンセプト”そのものの設定が生みの苦しみでもあり、様々な検討を進めていく試行錯誤の中で、腹の据わりと共にだんだんと明確化されていくことが多いのが実態です。

 

このように、実務上“コンセプト”の設定はとても難しいという現実があります。

 

難しさの原因は、「こだわり」とは売り手の考え方でしかないコトを、概念的・抽象的な世界で捉えて、お客様に伝わる文言(コピー)にしていかなければならないからです。

 

実際、業績を伸ばされている経営には、間違いなく秀逸な“コンセプト”が存在しています。

 

例えば、国・地域レベルのコピーで見ていきますと、「愛の国イタリア」と「彩の国さいたま」。どちらを魅力的。。。と感じたでしょうか。

 

おそらく、多くの方がイタリアに軍配を上げたのではないでしょうか。その要因を考えてみましょう。

 

「愛の国イタリア」は、イタリア人の価値観としての「こだわり」を表すと同時に、我々外国人が見ても、イタリアに行ったら優しくしてくれそうだ、モノのデザインにも愛を感じる、何よりも愛を大切にしているなんて素晴らしい。。。といった受け手側にとってのメリット・ベネフィットが連想されます。

 

一方、「彩の国さいたま」は、彩(いろどり)豊かなんだな、大宮という街もありながら秩父の山渓もあり、工業も盛んな一方で農業も、野球もサッカーもなど。さいたまについての事実は予想できますが、それが我々にとってどのようなメリット・ベネフィットにつながるのかという点から見ると、イタリアと比べてメッセージ性が低いことが分かります。

 

つまり、“コンセプト”の設定にあたっては、御社側の「こだわり」を出発点としていながらも、受け手側にとってのメリット・ベネフィットまで匂わせるところを範囲として含むことが大切です。もう少し補足すれば、当社側の「こだわり」とお客様のメリット・ベネフィットの中間地点に“コンセプト”を置くことが大切ということです。

 

また、「こだわり」の表現方法として最も多い間違い方は、「こだわり」を手段レベルに置いている場合です。例えば、「ウチのラーメンは小麦にこだわっている」や「ウチは鮮度にこだわっている」といった場合です。これは、部分的な「こだわり」ではあるものの、全体を貫く基本思想としての“コンセプト”にはなっていません。

 

“コンセプト”の設定は、全体のレベルで「こだわり」を捉え、それがお客様にどのようなベネフィットをもたらすのかを表現することが大切です。

 

これは、御社独自の切り口であり、市場への切り込み角度でもあります。秀逸な“コンセプト”は、御社の価値観を伝え、同時にお客様にとってのメリット・ベネフィットを伝えます。だから売れるのです。

 

御社の“コンセプト”は「こだわり」とベネフィットを含んでいますか?

事業開発にあたって“コンセプト”ワークを大切にしていますか?

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