【第86話】事業の永続的発展に欠かせない努力の在り方

DNAという言葉は何とも魅惑的です。この世の生きとし生けるものすべてが固有のDNAを持っており、DNAは当に「命の暗号」であって、単なる原子を生き物へと形作るための設計図です。

 

企業にあっても「これがわが社のDNAです」などと言います。この場合、本当に塩基配列としてのDNAが存在するわけではなくて、製品・商品・サービスといった物理的なモノのウラ側にある企業としての基本思想として、脈々と受け継がれてきた大切な経営哲学のことを指しています。

 

つまり、ウラ側にDNAとしての経営哲学があり、それが表に現れるカタチとなって製品・商品・サービスといったものになっているという関係があります。

 

生物学や動物行動学の分野では、DNAの型を遺伝型(ジェノタイプ)、その遺伝型から現れる形質や行動を表現型(フェノタイプ)と呼びます。

 

企業の遺伝型とは、経営哲学や価値観とも言えるでしょう。中小企業の場合であれば、社長殿ご自身の考え方や生き方でもあります。

 

そして、表現型とは、遺伝型を踏まえて具体的に表現されたものです。製品・商品・サービスなどが、表現型だからこそ、企業らしさという他社とは違う匂いが生まれるのです。

 

既存事業のテコ入れや新事業の立ち上げにあたり、上手くいくのはやはり表現型な打ち手です。本能の声に従った打ち手ですから、この打ち手が自分達にとってベストだという確信にも近い感覚を伴って、打ち手を繰り出すことができます。そのため真剣さも違いますし、よって成功確率が上がるのです。

 

企業とは永続性を目指す存在です。継続企業(ゴーイングコンサーン)と言われますが、そのためには遺伝型を守っていくことが肝要です。

 

歴史ある有名な寿司店でしっかりと修業して、暖簾分けで独立したような方は、本店の味を守りつつ、本店とは違う雰囲気を醸し出します。

 

これは、しっかりと修業を積んだからこそ成せる業であって、この業とは手先の業というよりもむしろ、その背景にある寿司に対する考え方、思想についてしっかりと修業を積んでおられるということです。

 

事業経営というのは、終わりの無い挑戦への船出です。よって事業を始める時には絶対に辞めないということを同時に誓うことでもあります。カタチは変わりながらも「続けていくこと」が意識として前提になっていなければなりません。

 

新事業の開始にあたっては、撤退基準を設けて。。。とよくいわれますが、この撤退基準は、辞めるのとは違います。これからも続けていくために、次に繋げられるような展開へと力点を移していこうという意味です。

 

昨今、続けていくことに対する意識が低いまま事業をスタートしたり、事業を次から次へと浅く渡り歩く方をお見受けします。

 

そういった方々はそもそも最も大切で守って行くべき経営哲学としての遺伝型を構築しないまま、表現型だけで創業してしまっているといえます。

 

守ってゆくべきは御社の遺伝型、すなわち世に問うた主義主張としての経営哲学・価値観であって、それを事業たらしめていくために表現型レベルでの工夫が必要なのです。

 

社長殿がこういった意識レベルにあると、従業員の方々からは、少し理解されにくいかもしれません。

 

しかし、考えてもみてください。確固たる自社の経営哲学や価値観を持ち、自社事業の社会的意義について理解が深くに及んでおり、そして、それをご自身の理想としてしっかりと語ることができる社長殿とそうでない社長殿。。。どちらについていきたいですかと。

 

事業は「上手くいけば続けられる」のではありません。続けていく事を前提として考えているから続けていけるのです。そもそもの出発点での意識レベルが違うのです。

 

真の挑戦とは、遺伝型を守り高めていくこと。そのために、表現型としての打ち手に対する工夫努力を怠らないことです。

 

御社の遺伝型は明文化されていますか?

打ち手はその表現型になっていますか?

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