【第85話】社長の顔はバランスシートに現れる?

第16代アメリカ大統領だったリンカーンは「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」という名言を残しています。

 

事業経営であれば、経営者の考え方は最終的に数字として決算書に現れてきます。損益計算書(P/L)は1年間の経営成績の集計でしかありませんが、貸借対照表(B/S)は、これまでに積み重ねてきた資産形成に関する意思決定を現しています。

 

そういった意味でB/Sは定量的に見た会社の顔つきです。

 

過去に厳しい状況をご経験されていたり、ご存知の会社さんが表舞台から消えたりと、永く栄枯衰退の世界を生き抜いてこられた社長殿ほど、B/Sに対して保守的です。

 

B/Sが保守的であることは、とても大切です。

 

ただし、ここでいう保守的とは、単に自己資本が厚いとか、固定資産が軽いとか、安全性や長期適合性…といった類の話ではありません。

 

自社の事業を成長発展させていくことに対して、しっかりとした考え方を持っているかどうかという話です。

 

例えばですが、賃借や外注を優先して変動費化することで固定資産の保有は最小限に留める、見込める売上の半分を設備投資の上限とする、内部留保を確実に行い自己資本比率が○%を下回るような額の借入はしない、減価償却費が○円を超えない範囲で計画的に設備を更新していく、手形は使わず契約として売掛・買掛サイトの適正化を図る。。。といった考え方をルール化して、そのとおりにB/Sが仕上がっているかどうかということです。

 

こういったルール化とは、未来の収益獲得に対して正当な成長欲を持ち、それを着実に達成していくためのルールなのであって、保守的といっても決して縮小均衡的なものではないということです。

 

こういった考え方は、もちろん自社事業の特徴を踏まえたものであることが必要ですが、ルール化ができている経営者というのは、ほぼ間違いなく会社を安全に成長させることができるパイロットだといえます。間違いなく一流の経営者ほど、B/Sに対する思想をしっかりとお持ちです。

 

事業経営はやるだけなら誰にでもできますが、しっかりと収益性を継続的に確保していくというのは難しいコトなのだという点について、正しく認識しておくことが大切です。

 

よくベンチャーという言葉を聞きます。ベンチャービジネスコンテストの審査員を仰せつかることもありますが、経営者のメンタリティとしていかがなものかと感じざるを得ない方も中にはいらっしゃいます。

 

ベンチャーとは冒険です。よってベンチャービジネスとは新技術を核として事業化を目指す冒険的な取組といえます。

 

ベンチャービジネスは、難しいということを分かった上で、これを成功させるためにより一層緻密に考えて準備するのであって、やってみなきゃ分からないでしょと言わんがごとく、ノープランで突撃していくのとは違います。

 

冒険家は目標を達成し生還するために、しっかりと訓練を積み、情報を収集し、ルートを精査し、道具類の準備をする。可能な限りの計画を尽くしても、なお天候などによっては目標達成を断念せざるを得ないことだってありますし、最悪の場合、生還することさえも叶わないことだってあり得るのです。

 

そして、こういった難しい事業ほど、出資、転換社債、私募債、経営者貸付、銀行融資、設備投資、在庫、運転資金、現金。。。事業開始時にB/Sをどう作り、その後、どういった方針で育てていくのかという思想が重要なのです。

 

B/Sは経営者ご自身の判断で作られていくということであって、リスクを取ることに対する経営者の意識がB/Sの顔つきとなって現れるのです。

 

意志をルール化していますか?

力あふれるB/Sになっていますか?

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