【第98話】経営のベストスコアを更新していく社長の共通点
前期の売上、利益…というのは、ご自身の中で超えるべき一つの目標と化します。そして、経営者にとって己に課せられた超えるべき壁のように立ちはだかります。
経営者にとって、過去を超えていくことに対する意識や執念は、自社のためにも、社員のためにも、極めて重要な意味を持ちます。
もちろん、日々進歩発展していく経営の世界で、向上心や探究心を忘れては現状維持もままならぬことは自明の理ですから、過去超え・今超えを目指すことは、社長である間、避けては通れないことでもあります。
こういった心情にあって、成長拡大に向けた経営者の取組み方は大きく二つに分かれます。
それは、本業を軸に事業を育てようとする方と、何か次に売れそうなものを探そうとする方です。
これらは、一般に言われる「プロダクトアウト」「マーケットイン」や、「内部成長」「外部成長」とは違います。
ここでお伝えしたいのは、取り組もうとしていることの種類の違いではなく、“深さ”の違いだということです。もっと言えば、これらの違いは、その“深さ”を掘ることに対する覚悟という入口の違いでもあります。
すごく単純化すれば、経営とは、自社の基礎となる能力・技術を探究して、それをお客様の価値に応用する活動です。
つまり、この視点に立てば、経営を向上させるには、自社の能力を高めるか、お客様への応用価値を上げるか、これらを同時に高めてレバレッジを効かせるか、しかないのです。
こう申し上げると、それ以外にも方法はある。。。というご意見が聞こえてきそうです。それは多分、資金を投下して、経営規模を大きくすることで売上を伸ばす方法かと。。。
ですが、そういったご意見には「その方法は、売上は向上するかもしれませんが、収益性(利益率)は上がりますか?投資リターンは向上しますか?」とお聞きしたい。
収益性の向上が伴わなければ、その投資は概ね借入金の返済程度が上々であり、利益の再投資、拡大再生産という本質的な成長発展は叶わないでしょう。質的な向上を伴わない経営拡大は、むしろ危険信号なのです。
ここでお伝えしているのは、成長拡大の手順として、まず経営の質的な向上を考えるのが鉄則である、ということです。その上で、量的にドーンと資本投下をしていくことについては、むしろ積極的に検討していただきたいのです。何事も順番が大切です。
とある社長殿は、これまでの同業界を「手抜きしている、いい加減で済ませている」とおっしゃいます。その位、誰よりも考え抜くという思考的努力の上に、年中働くという行動的努力を重ねておられます。
また、とある社長殿は、危機的な状況下で考え抜いた目の付け所で、新機軸を打ち立て、独自の市場を創り出し、収益性の高い事業モデルを構築した上で、その利益の再投資として一層の成長拡大を目指しておられます。
ベストスコアを更新していく社長殿に共通しているのは、まずなるべくお金を掛けずに必勝方程式を考え抜いた上で、順次、資金を投下しているという順番です。実は傍目から見る以上にとても慎重です。
そして、その際の考え方は、本業志向だということです。自社の事業に対する確固たる自負を持って、「売れるモノ」を売れるレベルまで掘り下げて考えているのであって、決して「売れそうなモノ」を探しているのではありません。
そして、みなぎる自信は、当然のことながら誰かから与えられたのではありません。ご自身の行動的努力よりもむしろ思考的努力から生まれています。つまり、収益性の高い事業の発案者としての自信なのです。
自社事業に対する自負とご自身に対する自信が、努力への躊躇いを消し去り、より一層迷いなく“深さ”を追うことに専念することで、また事業が高まっていくという上昇スパイラルを生み出しているのです。
御社の事業開発は“深さ”を追求していますか?
資本投下に先立ちまず経営の質的向上を目論んでいますか?