【第95話】投資の“質”を劇的に向上させるために必要な二つの準備

経営とは投資です。ですから、投資に対する意欲というのは、経営者としてとても大切なマインドです。

 

投資は、大抵の場合、その影響期間が長く、一旦実行してしまうと、後悔しても元に戻すことが難しいという特徴があります。

 

在庫投資程度ならまだしも、建物投資や設備投資となれば、一旦決めてしまうと投資回収に数年から数十年を要します。さらに研究開発投資や広告投資ともなれば、全く成果を得られない可能性すらあります。

 

よって、投資の意思決定にあたっては、その“質”がとても重要です。ここで投資の“質”とはすなわち勝算です。勝算を規定するためには、達成すべき効果、投資回収・リターンやその期間といったことを予め目論んでおくということです。

 

伸びている企業は、投資の“質”を引き上げるのが上手です。

 

ところが、残念な投資の意思決定というのは、投資の“質”が高まらないうちに実行に移してしまうことです。走りながらの修正が頻繁で極めて大きいため、だんだんと疲れしまう状態に陥り、経営が成長活動とは程遠い尻拭い活動になってしまうのです。

 

投資の“質”を上げていくためには、二つの点で準備が必要です。一つは組織上の準備、もう一つは予算措置上の準備です。

 

経験的に申し上げますと、投資に対する“質”の確保は、売上高が10億円を超えたあたりから、より一層、重要性を増してきます。

 

組織上の準備とは、組織図上に企画や開発を担当する部署を設けることです。例え室長や担当者が他の業務と兼務であったとしても、組織図上に「企画室」を設けることをお勧めしています。

 

考えていただきたいのですが、新事業を立ち上げたり、新製品・新サービスを開発したりというのは、全社的な取組、組織機能横断的な取組だということです。

 

よって、誰かが旗を振って音頭取りをしない限り、各組織機能に振っておいただけで進むような仕事ではないのです。

 

例えば、社長があるマネージャークラスに「新事業を立ち上げよ」と号令をかけたとして、その方が総務や経理、営業や技術といった所属であれば、その方に声をかけられた人達は「タダでさえ忙しいのに、何でこいつの声がけで面倒なことに巻き込まれなければならないのか」と反発は必至です。

 

現場改善といったオペレーションレベルの取組であれば、こういった組織機能からの声がけでも動いていくでしょうが、こと成功するかどうかも分からない新事業となれば、組織機能レベルからの声がけでは腰が引けて動けないというのが従業員の心情というものです。

 

ところが、この方の肩書が、例えば「企画室付総務部マネージャー」となれば話は違います。その響きから全社の公式的な取組として進めやすくなります。

 

続いて予算措置について。事業開発や研究開発といった取組は、既存事業のメンバーから見ると、自分達の稼ぎを食いつぶしているように見えるということへの配慮が必要です。事実、短期的に見ればそうなのです。

 

よって、これは未来への必要な投資であるということを示すためにも、売上高の一定割合や一定金額を、あらかじめ予算化して損益計画に組み入れておくこともお勧めしています。

 

そうすれば、「せっかく俺達が稼いだのに、あんな事に使われて大丈夫なのか。。。」といった既存事業側からの声に配慮することができますし、あらかじめ伝えておくことで活動への理解が深まり、応援・協力ムードを醸成しやすくなります。

 

経営における投資とは博打ではありません。投資か博打かの違いは「勝算」の違いです。そのために投資の“質”を上げるための下準備が必要なのです。

 

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