【第93話】成長発展をもたらす利益向上と苦しくなる売上向上

事業を行う、始めることそのものは端的に言えば誰にでもできることです。ですが、利益を出すとなるとなかなか大変です。ましてや継続的に。。。となると尚更です。

 

なぜ利益を出すのが大変なのか。。。それは利益とは付加価値の創造に他ならないからです。

 

一万円札を「9千円で買いませんか?」と言えば、直ぐに売れるでしょう。そして9千円の売上と1万円の費用が計上されます。よって千円の赤字になります。赤字でも良ければ簡単に売上を獲得することはできるのです。

 

つまり、売上を上げることよりも利益を上げることの方が難しいのです。ですから弊社では、売上視点ではなく利益視点、投資リターン視点で事業を構築することを強くお勧めしています。

 

収益性の悪化は、販売不振が原因だと思われがちですが、真因は違います。なぜそう言い切れるかと申しますと、理由はとても簡単です。販売不振ということでお呼びいただき話を伺うと、ほとんどの場合「これでは売れない」という状況だからです。

 

提供価値の相対的な劣化や不足が根本原因であり、それを改善せず販売を伸ばそうとしても難しい、あるいは少し伸ばすことができたとしても、概ね値引きを伴うため残念ながら利益は出ないという結果になってしまいます。

 

ですから、販売テコ入れにあたっては、先ず提供価値を見直して魅力度を上げてから、販売に移るという2ステップを手順としてお勧めしている訳です。

 

事業拡大の手順も同様です。売上高が小さくてもしっかりと利益がでる効率的な仕組みを構築した上で、そこから獲得した利益を再投資することで指数乗数的に事業を拡大していくという拡大再生産の考え方が大切です。

 

例え小さくても先に利益の出る仕組みを考えた上で、それを回しながら事業を大きくしていくという手順です。採算性の悪さを規模の拡大でカバーしようとする事業拡大の先には、いずれ極めて厳しい顛末がやってきます。

 

では具体的にどうすればよいのでしょうか。例えば、製造業であれば材料を購入して、それを加工して製品にして販売することで、製品価格と材料費・加工費の“差額”を生んでいます。つまりこの“差額”こそが付加価値であり、利益を企画することの本質です。

 

“差額”の創り方は、大きく二通りしかありません。欲しいと思われるお客様の支払い意欲の高い価値を創り出すか、それを生産効率的に実現するかのどちらかです。つまりより高く売れるモノをなるべく安く作り出すこと。これを摺り合わせしながら一体的に考えていくのが事業構築のプロセスだということです。

 

昨今、ビジネスモデルという言葉を聞きます。利益を生むビジネス収益構造システムといったところですが、この利益追求の姿勢に、大切な視点が抜け気味になっていると懸念しています。

 

それはお客様を大切にする姿勢です。お客様が神様だとは言いませんが、畏敬の念を持って接することは商売の基本姿勢です。

 

Webなどでお客様と顔を合わせずに販売する機会が増えたため、顧客対応=受注メール処理。。。といった手続きレベルになっていることも一つの原因でしょう。

 

また、一部のサービス業などでお見受けするのは、価値に見合わない価格を付けておき、それを割引しているかのように見せて売るといった行為です。こういった有利誤認表示はもはや違法行為であり、商売に携わる者として絶対に超えてはならない一線です。

 

昨今のビジネスモデルに関する話題は、売り方・儲け方に偏っており、真にお客様への提供価値を高めることや、それを実現する生産改善に対する工夫の視点が不足しています。勿論、販売行為は大切ですが、それだけに偏った経営姿勢は高付加価値を生まないため、例え売れたとしても高収益を実現することは難しいでしょう。

 

事業構築とは、製品・商品・サービスによる新たな『欲しい』を考えると同時に、それを生み出すより効率的な製造・販売の相乗的な実現方法を考えるということです。

 

この生産性の向上、すなわち付加価値の増大を、自社の使命感や能力向上といった長期の視点で目指していく姿勢が大切です。

 

御社の事業構築は、お客様への提供価値を中心に見据えていますか?

販売に先立ち、価値を具現化する生産効率に目を向けていますか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム