【第92話】新事業開始に向けて必要不可欠な準備の核とは

新商品・新サービスについてご説明いただく機会が多くあります。経営者の方はその良さを伝えようと一生懸命にお話されます。

 

私も、どうすれば売れるようになるか、どう説明すればよいか、誰に売り出せばよいか。。。などを考えながら真剣にお聞きします。

 

結論から申し上げますと、もう少し準備をしてからの方が良いのではないでしょうか、とお伝えする場合が多くあります。

 

もちろん、経営者の方も今の時点での意見を聞きたいと仰っているのであって、これで準備万端などとお考えなのではありません。この後、どんな方向性で進めていけばよいか、どんな準備をすればよいかなどについてヒントが欲しいということです。

 

新事業のスタートにあたっては、真に万端の準備などがあるはずもありませんし、体制万全のつもりでスタートさせたものの、受注どころか問合せさえすらも全く。。。という状況から、ご連絡を頂くこともあります。

 

ですが、これだけは確実に言えます。かつての足りない時代の準備と、現在の足りている時代の準備では、求められる準備のレベルに違いがあるのだということです。

 

足りない時代であれば、必要なモノが作れさえすれば売れました。少し言い換えれば「〇〇できる」という能力自体が売れたのです。

 

しかし、足りている時代になれば、すでに最低限必要な部分の需要は満たされています。よって、「〇〇できます」と言っただけでは売れません。

 

「当店、ラーメンできます」という看板を見て、行ってみたいと思いますか。。。ということです。これは笑い話などではなくて、多くの企業で未だお見かけする事実です。待ち請けスタイルなのです。

 

足りている時代には、「〇〇しませんか」とお客様に問いかけ、新たな欲しいに気付いてもらわなければなりません。「札幌の伝統を今に受け継ぐ味噌ラーメン、味わってみませんか」だと売れそうに思えてきます。提案スタイルだからです。

 

この提案スタイルの前提となるのが、価値軸を持つということです。実はこれが簡単ではありません。

 

多くの企業が、成長の過程で「できる」範囲の拡大に努めてきました。なぜなら足りない時代、「できる」範囲こそが受注の範囲であり、売上を伸ばす作戦として合理的だったからです。そしてやっと総合○○やトータル○○と自信を持って言えるようになったと喜んできたのです。

 

そんな中、既存の取引先からの受注が減少し、新規の顧客獲得が必要になり、営業先で「御社に何ができますか?」と問われ「総合○○なので何でもできます。おっしゃってください。」などと言えば、二度とアポイントは取れないでしょう。時間の荷駄だと怒られるかもしれません。

 

だからこそ、価値軸を持って提案スタイルを採ることが大切なのです。提案によってお客様に新しい価値軸に気付いてもらう必要があります。

 

価値軸以外の「できる」を捨てようというのではありません。「できる」に主従重みを付けましょうと申し上げています。味噌ラーメン以外に醤油ラーメンやチャーハンがあっても構わないのです。

 

新たな価値軸を示すということは、外から見ると専門特化しているように見えます。ですが実は専門特化自体が目的ではないことに留意が必要です。

 

既存の取引先であれば、ルート営業ですからまだ御用聞き的な営業スタイルも通用する部分があるかと思われますが、そういった世界でも既に相当に提案スタイルに移行しつつある実態を知らなければなりません。

 

足りない時代の事業拡大、特に新商品・新サービスで新規顧客の獲得を目指すとなれば、価値軸を持つことは「欲しい」に気付いてもらうために必須の準備なのです。範囲を狭めて提案することはとても怖いことに思えますが、その準備とは実はお客様理解をもう一歩深く進めることでもあるのです。

 

御社の事業は価値軸を持っていますか?

その価値軸は提案スタイルになっていますか?

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