【第487話】経営努力が報われるための生産性思考
「今期も経常利益率は10%超えを維持できそうです」と社長。過去の苦労した経験から、新事業構築にあたっては徹底して高収益な事業モデルを目指し、それを実現されています。
経営の目指す姿として「高収益」ということがしばしば登場します。
ちなみに、高収益とは、売上や利益の金額の大きさではなく、利益率のことです。つまり、経営の量的なことではなくて質的なことだということです。
こうした経営の質的なことを測る指標として「生産性」があります。
生産性とは、経営資源の投入量に対する生産量の割合、生産性=生産量/投入量で表される率としての指標です。
こうした生産性の概念とは、手作業でやっていたことを機械化したりといったこと、労働装備を整えていこうという、いわゆる経営の高度化の指標として用いられてきました。
ただし、実務的にはもっと具体的な生産性指標として付加価値生産性があります。
付加価値の算出法も様々ですが、ここでは控除法で考えてみましょう。
付加価値額 = 期間売上 - 外部購入価値
ここで、外部購入価値とは、機械設備の減価償却費、維持修繕費,材料費、外注加工費のように外部からの購入に要した費用のことでです。
売上から要した費用を引いていますので、付加価値額というのは粗利に近い概念だと理解できます。
いわば、買ってきた材料に手を加えていくらで販売できたか…の差額だということです。
ただし、大切な視点は「人件費」を含んでいないということです。
大切なことなのでもう少し補足すれば、「人件費は付加価値額から支払われる」ということです。
それならば、経営において、努力が報われる…とは、自分たちの働きがそれ以上の付加価値を生み出せている状況といえるでしょう。
これを逆から見れば、人件費が低ければ付加価値額も低くて良いという文脈が成り立ってしまいます。
昨今、「雇用を生み出す」といったことを経営目的の一つに据える経営者が増えています。
当然のことながら素晴らしい目的意識なのですが、誤用も見受けられます。その誤用の原因とは、妥当な人件費に対する見積り認識です。
例えば、スキルレベルから月20万円の労働力ポテンシャルを持っている人が居るとします。しかし、この方は、現在、働いていなかったとします。
この働いていない方を雇用して10万円の給与を支払ったとして、それは本当の意味で「雇用を生み出した」ことになるのでしょうか…ということです。
努力が報われる…とは、自身の労働力ポテンシャル相当か、あるいはそれ以上の付加価値を生み出している状況といえることです。
会社として皆が集まって働くことの理由は、生産性を上げることです。
もっと具体的にいえば、集まって働くことで一人で働く以上の付加価値を生み出すことができ、それぞれが持つ労働力ポテンシャル以上の給与を得ることができるのです。
高収益体質を目指すというのは、決して楽にバカ儲けしようといったことではありません。むしろ創意工夫という苦難に取組み、より一層の付加価値を生み出し、そこで働く努力が報われるようにしていくという至極当然の取組みなのです。
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