【第484話】新製品開発の成否は製品よりも市場が大切

「また凄いお客様から“お問合せ”をいただきました」と嬉しいお話。新製品開発の苦労が、着実に新たな事業展開を見せています。

 

新たな仕事がまた次なる仕事への布石となり、その先へと成長発展の軌跡が描かれていくダイナミズムは、経営者にとって苦労の甲斐ある報いの歴史です。

 

昨今、企業の“お問合せ”という入口から営業を仕掛けようとする手口が横行しています。

 

ここで手口と呼んでいるのには理由があります。問合せ先の商品サービスを買おうとするのではなくて、自分たち側の商品サービスを売ろうとしている。

 

相手の話を聞かせて…ではなく、私の話を聞いて…ということで、お問合せの本来的な使い方でないからです。

 

実際、国の機関が運営しているようなビジネスマッチングプラットフォームでも、こうした手口を用いる企業が出始めており、残念なことです。

 

もちろん、商売ですから上手くやるに越したことはありません。そのために様々な場を最大限に活用していこうとする商魂的な逞しさは大切です。

 

ここで残念…とお伝えしているのは、そんな手口に引っ掛かるのは、どんなお客様なんですか?ということです。

 

ビジネスとは、お客様との関係で成り立っているもの、経営とはお客様活動です。ですから、御社のビジネスは、「製品サービス」と「お客様」の組合せで定義されるということを肝に銘じておくことが大切です。

 

ところで、新分野に進出したい…といったことでお問合せいただきます。新分野進出…と聞けば、どこか積極的な印象ですが、よくよく聞けば、新しい販売先を紹介してもらいたい…だったり、経営者の意識も様々です。

 

こうした場面で便利なのが「アンゾフの製品市場マトリクス」です。

 

ちなみに、製品市場マトリクスとは「製品」と「市場」のそれぞれを「既存」と「新規」として4つの組合せで戦略の類型を考えようとするものです。

 

製品:既存-市場:既存 ⇒ 市場浸透戦略(今の製品を今の市場にもっと売っていく)

製品:既存-市場:新規 ⇒ 新市場開拓戦略(今の製品を新市場に売っていく)

製品:新規-市場:既存 ⇒ 新製品開発戦略(今の市場に新製品を売っていく)

製品:新規-市場:新規 ⇒ 多角化戦略(新事業に進出する)

 

こうした戦略類型は「成長ベクトル」と呼ばれることもあって、経営者が目指す方向性の認識合わせに有効です。

 

ここで、優れた経営者なら大切なことにお気づきのことと思います。新製品開発と新市場開拓…どちらの方がクリティカルか?

 

新市場の創造に向けて新製品を開発する…とすれば、新製品の開発が“手段”で新市場の創造が“目的”です。

 

新市場の創造、新たなお客様にご購入いただくこと…が新製品開発の目標だということです。新製品開発をやり切る…とは販売までやり切ることです。

 

ただし、ここで腰が引けて、売りやすいお客様を頭に描いてしまうとどうなるでしょうか。

 

特に、「ビジネスは問題解決」といったことを真に受け、問題解決の下請けになってしまったならば、価格の決定権を失い、値引き競争に陥り、売れるけど儲からない、存続不能という結末が待っています。

 

ちなみに、新製品開発の肝は、「本物のお客様」を念頭に、そのお客様に先回りして準備することです。問題解決のその先をご提案するための準備意識です。

 

ここで、本物のお客様…とは、その新製品の価値をしっかりと認識下さるお客様のことです。普及啓蒙的な営業トークは一切不要、新製品を見れば「待ってました」とばかりに、その価値を瞬時に見抜ける方々です。

 

本物のお客様とのお付き合いを目指す――、これが新製品開発の極意といえるでしょう。

 

新製品開発は本物のお客様を見据えていますか?

問題の下請けに留まらず、問題解決に先回りしていますか?

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