【第467話】未来につながる新事業構築、3つのチェックポイント
「どこを見ても暗いニュースばかり、こういう時代だからこそ理想を語りたいですね」と社長。
前号のコラムで「社長は正義よりも理想を掲げて…」とお伝えしたことをお読みいただいたようで、嬉しいことに賛同の意を示してくださいました。
仕事柄、新事業のアイデアをお聞きします。その昔には、直接の経営相談、公的機関経由のご相談、ビジネスコンテストの審査員等々を含めれば、年に100件を超す事業アイデアをお聞きしていた時期もありました。
そうした経験から見出した成功のための法則と失敗しないための法則は現在のコンサルティングを生み出す礎となっています。
当然のことながら、新事業とはその先の成長発展を見据えた布石です。いわば、経営者人生20年の全体を見据えつつ、まずは10年先の目指す理想につなげていくためのこれからの3年戦略…といったところでしょうか。
これを逆から見れば、新事業はそれ自体の成功もさることながら、布石であるということに意識が及んでいれば、その先にまで影響が及ぶということを考えておいた方が良いことは言うまでもありません。
こうした布石、大切な一手を、目指す理想なくして儲かりそうだから、従業員から言われたから、補助金がもらえそうだから…といったことで始めてしまったとしたら、どうでしょうか。
まずは稼いで先立つものができてからやりたいことをやる…というのは、一見、尤もらしく聞こえるかもしれませんが、そうした考えで、その先を実現している人はいないということを知っておくことが大切です。
稀に、もう相当に大変な資産をお持ちで、本業の片手間で資金運用的に某フランチャイズ事業をやっていたりする方もいらっしゃいます。
それを見て、まずはそうしたサイドビジネスで小銭を貯めて…といったことはとても危険です。理想を目指す布石の道から外れてしまいますし、何より副業が本業を助けることなど所詮、期待できないからです。
少し話はそれましたが、理想を目指す経営戦略において、新事業布石論はとても大切です。
実際、例えば京セラ本社の2階にある歴史館(京セラファインセラミック館)の壁面には、どの製品がどのように生まれてきたのか、技術開発の布石が、つながり、系譜として示されています。
では、こうした先人の知恵も踏まえて、どのように新事業を計画していけば良いかと言えば、実務的には大きく3つのチェックポイントに整理できます。
〇カッコ良さよりも地道な仕事
今の仕事、現有の組織能力を起点にその先を考えることが大切です。次なる打ち手をその先を拓く布石にしていくためには、片足ずつ先に進めていくことが大切です。今の仕事は衰退している、業界が悪い、大変だから…と言うなかれ。隣の芝生は青く見えるかもしれませんが、今いる地味なところからその先を考えてみましょう。
〇採算と経済的自立水準
良いことをやっているんだから儲からなくてもいい…は甘えです。必死で世の中のために働き、その対価を得て、事業を継続可能な採算に乗せて、経済的に自立する水準の達成は必達目標です。そのための具体策を計画に織り込みましょう。
〇夢よりもまず現実的目標
10年先の理想はまだ達成できていない夢です。ですから、これを新事業3年計画として現実的な目標に落とし込みましょう。その新事業は地味に見えるかもしれません。売上利益が小さくて貧弱に見えるかもしれません。しかし、それが現実的であるとは、計画がカラフルであるということ。経営者にイメージできていることしか実現できないと心得ましょう。
経営計画が“祈り”では困ります。目指す理想が“夢”であっても困ります。自ら目指す理想に向けて歩いていくという負荷を担う覚悟として、御社らしい新事業に挑んでいただきたいと切に願っています。
御社の歴史を布石で語ろうとしていますか?
新事業は目指す理想に向かっていますか?