【第443話】成長投資の成功マインド
「長年使ってきた設備が古くなってきたので、新しい設備で補っておいた方が良いかと思い、最新の設備を入れたんですけど、どうも稼働が低くて…」と社長。
聞けば、確かに最新技術の設備で、投資額は〇億円ほど。売上規模に対して無茶な投資規模ではありませんが、その活用法、投資に見合った成長の筋を見出しきれていません。
言うまでもなく経営は投資です。経営の常として、先に努力や犠牲といった種蒔きがあって、後からリターンがもたらされます。
ですから、こうした投資、いわゆる先行投資というのは、未来のリターンを生み出すためにも、欠かせない経営意識といえます。
一方、こうした投資で経営が傾きます。投資は一旦実行してしまうと後戻りが難しく、その判断の影響が長期に及ぶからです。
むしろ、経営の実際は…といえば、こうした先の見えない中で賭けた投資を、なんとか間違いではなかった、成功させたい…と、後からの努力で何とか軌道修正、尻拭いしながら渡り切ってきた…というのが多いのではないでしょうか。
経営、投資はやってみなければ分からない。それは事実でしょう。ただし、その勝算については、投資時点で目論見を持っておくことが大切です。
その目論見とは「投資回収」です。投資は回収してゼロリセット、その先にもっとリターンを生み出して、はじめて成功と呼べるものです。
まず、間違った投資意識からお伝えしておきましょう。それは、設備投資が新事業の始まりだと考えていることです。
工場や店舗を持つことが、新たな挑戦のスタートラインだと考えており、まずはそのスタートラインに立ってから、その先を考える…という投資意識です。
こうした投資意識は、経済、市場が成長していて、供給さえできれば、売上利益が見込める…という勘違いによります。
実際、今でも「あの話、銀行の融資がつかなかったのでやめることにした」といったお話を耳にします。
つまり、新たなビジネスを開始するにあたって、設備があって、その設備投資の資金調達ができれば、新事業スタート…とお考えです。そして、その先は走り出してから…という訳です。
では、どのような準備、目論見を持って設備投資を企てれば良いがといえば、その答えはとてもシンプルです。
それは「投資回収」です。経営は投資です。先に出て後から戻りがあります。ですから、その後からの戻りについて、どのような期間を要するのか、どのような戻りが期待できるのか…といったことを投資時点で考えておくということです。
設備投資は、そのビジネスを開始する権利を得るためのものではありません。投資時点で投資回収までの道筋を描いておくことが大切です。
設備投資にあたって、投資回収の長さがリスクです。投資回収までの期間が長いと、その間に不測のリスクにさらされる可能性が高まるからです。
一方、設備投資は長期的な視点で考えておくことも大切です。
その意味とは、長期的な成長路線を描きつつ、設備投資の回収期間はなるべく短く設定しながら、段階的に計画実行していく…ということです。
成長戦略を描くにあたって“拡大再生産”という投資意識がキーワードです。まず小さくても儲けて、それを再投資しながら、複利的に成長の道を歩んでいく…という意味です。
経済成熟、デフレの時代にあって、借入先行の設備投資を改め、まずは初期投資が小さくともリターンを生み出す創意工夫が大切です。
経営の強みとは設備そのものではなく、その使い方にあることをお忘れなく。
設備投資は、投資回収以降まで描けていますか?
投資リターンによる拡大再生産の道を描いていきませんか?