【第44話】未来を切り拓く「業態化意識」とは

“業種”とは「取扱商品」による分類。米屋、魚屋、肉屋。。。といった商品軸による分類です。“業態”とは「提供の仕方」による分類。コンビニエンス・ストア、ディスカウント・ストア、ホームセンター。。。といった顧客軸による分類です。

 

経営を成長発展させていくためには「業種店を卒業して業態店になりましょう。」とか「業態化を図っていかなければ生き残っていけません。」などと言われてきました。

 

ところが昨今、業態化だけではもう足りず、更に一歩進んだ取組が必要になっています。

 

ではどのように業態化を進めていけば良いのでしょうか。

 

大抵の場合、事業の成長拡大に伴い取扱商品は増加していきます。製造業であれば「製品ラインナップ」、サービス業であれば「サービスメニュー」、卸売や小売といった流通業であれば「品揃え」。

 

取扱商品が増えること自体は、お客様の要求により幅広く応えられるようになったという企業発展の証でもあり嬉しい事です。

 

ところが、取扱商品は“増やす”ことよりも“減らす”ことの方が難しいという特徴があります。増やすことは出来ても、なかなか減らすことができません。

 

問題は、むやみに取扱商品が広くなっていくとお客様から見て何屋さんだか分からなくなっていくという点です。企業自身も特徴を喪失していきます。そうなると売上は着実に右肩下がりになっていきます。

 

そう申し上げると「いろいろなモノを売って繁盛している店もあるじゃないか」と言われそうですが、その意見は間違いです。

 

業種の業態化とは、顧客にどのような価値を提供しているのか、という切り口で商売を捉え直していきましょうということです。例えばコンビニエンス・ストアは“便利(コンビニエンス)”を売っていて、時代とともに“便利”を更新し続けています。

 

ですが、実は二つのアプローチがあるということを分かった上で業態化を進めていかないと、上手くいくどころか現状を悪化させることさえあります。

 

一つ目のアプローチは、顧客を絞りつつ取扱商品を増やす方法です。

 

これは今ある業態から、対象とする顧客層を絞り込むことで、新たな業態開発を狙っています。

 

例えば、ディスカウント・ストアは安売りをウリにしたお店ですが、ここから顧客を絞って若者向けにする。これをやっているのはドン・キホーテです。ファンキーな若者達に顧客を絞り、その人達が欲しそうな視点で取扱商品を増やしていくことで、ディスカウント・ストアという業態を進化させています。

 

このアプローチは小売業に向いています。

 

二つ目のアプローチは、取扱商品を絞りつつ、顧客を広くとる方法です。

 

これは新たな専門領域を設定し、取扱商品をその範囲へと絞りつつ、新たな顧客層を広く取り込むことで、業態を転換していくことを狙っています。

 

例えば「洋食店」から「揚げ物専門店」へ。これは一見、業種区分のように見えますが、“揚げ物”という新たな専門性を設定し、メニューを絞りつつ、この専門性で広く顧客を捉えていこうという作戦です。これも業態化を進めたといえます。

 

この二つ目のアプローチは自社の能力が事業のコアとなるサービス業や製造業に向いています。「アウトレット」といった専門性設定であれば小売業でも使えるアプローチです。

 

いずれにしても、上手く商売を展開していくためには、業態化を意図的に進めていくことが必要です。そしてその際、顧客を絞って取扱商品を広げるか、専門性(取扱商品)を絞って広く顧客を取るか。どちらかを先に絞った上でもう一方を広く取ることを考えなければなりません。人間心理としてどちらも広く取りたくなりますが、残念ながらそれは無理、必ず失敗します。

 

御社では意識的に業態化を進めていますか

業態化のアプローチはどっちですか?

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