【第45話】社長の本棚が示す企業の未来像

社長室にお邪魔すると、大抵の場合、本棚があります。

 

初めてお邪魔する社長室では、この本棚にある本の話に意識的に触れています。そうすると、いくら時間があっても足りないほど話が弾みます。その場で、本をご推薦いただくことも、頂いてしまうこともあります。

 

社長室の本棚には特別な意味があります。社長殿の学びの意識の現れでもありますし、何よりもその学びの先でご自身が何者になろうとしているかを現しているからです。そして会社は間違いなくその方向に向かって進んでいきます。

 

「本屋さんに行くとお手洗いに行きたくなる」というジンクスはとても頷けます。先人達や今をしっかりと生きようとしている人達の莫大な“知恵”が本屋さんには詰まっている訳で、これに触れることで自然と頭が回り出し、自らの修養の足りなさを思い知らされることになるからではないかと。強い選手との試合に向かっている時のような気持になります。

 

経営者の方々はとても勉強熱心です。月に10冊もの本を読む社長、高価なセミナーであっても積極的に参加する社長、本を社員に配りその本を題材に試験問題を作っている社長、数字に弱い自分を克服するために会計学などを勉強し決算書を書き続けている社長、お風呂まで本を持ち込み読書している社長。。。

 

経営者勉強会では、頑張っていらっしゃる社長殿の講演をお聞きしたり、少人数での輪読会をやっていたり、学んでやるという姿勢からは覚悟とも言える意識がにじみ出てきます。

 

この様に勉強熱心な社長殿は、普段から何やら小うるさい人の様に思われそうですが、これが不思議、現実は全くその逆なのです。とても謙虚、エレベーター前や車まで見送って下さったり、丁寧に御手紙やお中元をお送り下さったり、時にはご友人の社長殿をご紹介いただくこともあります。

 

そして、勉強熱心な社長殿には共通点があります。経営姿勢に対してそれはどうかと意見することはあっても、方法論について否定的な意見を言う社長殿はほとんどいない、という点です。

 

どんな方法論にも一長一短があることをご存知で、それを使うも使わないも結局自分自身の決定次第、という自助の精神の境地に達しておられるからだと思います。

 

そして何より、「やり方」よりも「あり方」を優先しているという意識の現れなのでしょう。ですから、その姿勢は“方法”を探しているというよりは、むしろ“道”を探しているように見えます。

 

お仕事をお手伝いさせていただく経営コンサルタントの立場としては、幾分遠回りの様に見えますが、必ず企業の根元的な部分に立ち戻った上で、その先の方法論を築き上げるという手順を踏んでいます。

 

もちろん、そのような一見面倒な手順を踏むのには理由があります。一義的には現状の延長線上で繰り出す打ち手では、顧客に対する追加的なインパクトが小さいということもありますが、根元的には、経営における打ち手とは、ほとんどの場合“方法”の選択ではなく“道”の選択だからです。

 

寡黙で多くを語らない社長殿であっても、行動では多くを語ってくれています。長く社長を務められておられる方ほど、ご自身が範を垂れて示すことに慣れているのです。

 

小売店舗の棚割・陳列の基本に「ゴールデンゾーン」という考え方があります。最も顧客の目にとまる床上70cm~160cm程度の売れやすい範囲を指す用語です。

 

これを社長室の本棚に例えると、やはりゴールデンゾーンにはあり方や生き方といった経営哲学書の類が並んでいることが相応しいのではないでしょうか。ゴールデンゾーンが例えばSNS集客法では何とも心許ないと言わざるを得ません。

 

その上側には業界動向書、その下側には経営理論書、更にその下側最下部には事業に関わる専門書などが並んでいると、未来に対して力が沸いてきます。そして、趣味の本が味付けで少々。。。

 

先人達の知恵を活かすも殺すも我々次第。日々目にする本棚だからこそ、そこから受ける影響は大きいはず。並べ方にまで気を配っておきたいところです。

 

社長の本棚は、御社独自の道を切り開いていく並べ方になっていますか?

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