【第412話】理想を追求するための経営数字の創り方
「もっと大風呂敷の計画を立てた方がいいんでしょうか?」と社長。次の資金調達にあたって事業計画の描き方に迷っておられます。
こうした、資金を調達する…ということは、事業拡大や発展に向けた打ち手ですから、経営としては積極的な姿勢の現れといえることです。
一方で、これを逆から見れば、やりたい事に対して資金が足りないから調達しなければならないと見ることもできます。
経営とは、投資であり、その投資が後にリターンの可能性を生んでくれるという因果関係にあります。こうした拡大再生産の循環プロセスをいかに描いていくのかということが、経営者としての一大命題ということです。
この起点となる投資の資金…がいつも問題になります。
そもそも既に稼いでいれば、手元に資金があって、それを再投資していく…という循環ができあがります。
これは、いわば「自己調達」と呼ばれるもので、資金の調達を外部になるべく頼らないようにして経営していこうとする「先稼ぎ」の資金調達のスタイルです。
この自己調達主義の良いところは経営が堅実だという点です。稼いだ後にそれを原資に投資をするので、仮に思ったようなリターンが生まれなかったとしても、昔、稼いだ資金が減るだけということです。
もう一つの資金調達法が「外部調達」です。融資や出資といった方法で、外部から資金を調達しようとするものです。これらは、まだ稼いでいない段階で、将来の稼ぎを担保にして、先に資金を調達するというものです。
これらは、いわば「後稼ぎ」の資金調達スタイルです。このため、予定した稼ぎが叶わないと、返済が滞ったり、出資に見合った配当などのリターンが生まれなかったりします。
また、融資や出資でも、その性格は全く異なります。融資は、約束した金利と元本の返済を行っていくものです。よって、こうした融資に対する事業計画は、約束を果たせそうか…という堅実性、着実性が求められます。
また、出資には、返済することに対する約束はありません。この資金を使ってリスクを取ることで事業を発展させて、利益の積み上げによって、その出資に見合ったリターンを得ることを目指しています。
よって、融資のプレゼンで「大風呂敷を拡げる」ような事業計画は、資金調達の性格から考えて違いますし、一方、出資を集うプレゼンにおいて、普通のビジネスで普通のリターン…という堅実な文脈は魅力なく、一定程度以上のリスクを冒してでも新たなリターンを目指すことに賭けるような文脈が求められます。
ただし、経営が一定程度しっかりしてくると、実は、資金面での心配はなくなっていきます。実際、「おカネは無くなれば調達してくれば良いだけ」という経営者もいます。
これは、世の中や経営をナメているのでも何でもありません。この意味とは、事業経営には資金調達以上に難しいことがある…ということです。
事業経営において、本当に難しいのは資金調達などではなく「理想を描く力」です。経営理念、経営哲学、ミッションやビジョンといったことです。
その実現のために、最大の困難が常に「人材」なのです。人を育てることこそ経営の本質であり、仕事を通じて人を育てる…耳タコなのはこのためです。
こうしたことから、従業員一人当たり売上高3千万円を目指す、研究開発に売上の5%を充てて新規顧客3割増を目指す、自己調達と外部調達を半々までに成長スピードを抑える…、人材育成と金目の情報量を結び付けて考えることで、現実的な事業計画を描くことができます。
ここで、現実的…といっても、この計画はとてもカラフルです。それは、ご自身や従業員の成長を見込んだ未来進行形な事業計画だからです。
資金調達の方法は経営スタイルと合っていますか?
資金を使って人を育てる未来進行形な事業計画になっていますか?