【第402話】ネット販売、成功の要諦
「早速、3件のご注文をいただきました」と社長は嬉しそうです。こちらの商品、まあまあお値段の張るモノなのですが、滑り出しは好調です。
ちなみに、ご購入いただいたお客様からお褒めのメールまでいただき、何度かやりとりをしているとのことで、そのメールも拝見いたしました。
面白いのは、商品を発送してお客様に届いた後、何か怒られたり、クレームになったり…、そんなことが心配で仕方なかったとのこと。
この瞬間のために準備してきたにも関わらず、売れたら売れたでまた心配。経営者というのは気苦労が絶えないものです。
ですから、商品に万全を期すこと、物理的に品質を保つことは絶対として、お客様側で起こり得るかもしれない心理的なことについては、「心配しないように心がける」ようお伝えしています。
さて、ネット販売を始めたい…というご相談を多く受けるようになりました。新型コロナもあって、特に飲食業や食品、飲料メーカーなどで業態転換を図っていきたいという意向が高まっています。
こうした背景もあって、ネット販売に取り組む企業は増えていますが、その多くが振るいません。
当然のことながら、ネットモールへ出店すれば、そこでは価格でソートされて一番安いところからしか売れないことなど明らかです。
そこで、「ネット販売」というよりも「直販」という営業姿勢の問題として、体制の導入や強化をお勧めしています。
それは、何もネットの時代だから、デジタル広告の時代だから…といった手法的なことではなくて、長い目で見た流通構造変化への対応という主旨でのことです。
ネット販売はBtoCの市場全体から見ればまだ1割程度ですが、今後、更に高まっていきますし、BtoBであっても検索時代の営業体制構築にあってネット販売体制は絶対的に不可欠だとお考え下さい。
では、ネット販売を伸ばしている企業は何をしているのか…ということについて、法則的にまとめたならば、それは大きく2つの戦略に分かれます。
まず、一つ目は「売り方」の戦略です。グーグル検索やSNS広告の仕組み、モール出店の方法といったことに対してどのように対処していくのかというものです。
もう一つは「作り方」の戦略です。自分で売るために、自社商品を新たに企画開発したり、既存商品をブラッシュアップして、お客様にまで届くように準備しようというものです。
ここで多くの「ネット販売」を目指す企業というのは、後者だということです。つまり、商品を「作る」企業が卸売や小売に頼らないビジネス構造、下流進出として「ネット販売」を企てています。
戦略の構図としては、長年にわたる流通構造の変化であり、「製造業の製造小売業化」といえることです。
そうであれば、実のところネット販売を成功させようとするならば、その本質は「売る商売」よりも「作る商売」、つまり商品企画力に掛かっているということです。
ネット上で“価格”でソートされる時点で、商品としての勝ち目はありません。自社商品の“価値”をしっかりと作り込み、それを求めているお客様にまで届くように準備するというのがネット販売戦略の肝なのです。
ネット広告対応のために、複数の同業会社を設立して…といった対策的な取組みというのは、テクニックに堕ちてしまっているという意味で、長期的な成長戦略とはなり得ません。
逆から見れば、売ってもらわなくても自社で売れる時代なのです。簡単ではありませんが、自分で売る、すなわち「直販」の意識を持つことが「ネット販売」成功の秘訣なのです。
WEBサイトの作り込みよりも商品を作り込んでいますか?
ネット販売をチャネル戦略ではなく商品戦略と考えていますか?