【第395話】現業を超えていく突破口の切り拓き方
「やっと、本格的にスタートです」――、嬉しいメッセージが届きました。
コロナ禍の影響もあり、思い切った路線変更に舵を切った経営者殿からのご連絡です。
ただし、路線変更といっても、棲む世界をまるっと変えたのではなくて、事業モデルを大幅に変革したということです。
弊社で後押しさせていただいている現業突破の成長戦略とは、その棲む世界を変えるというよりも、むしろ、棲む世界の中で新たな境地を目指す挑戦的なプロジェクトです。
ここで棲む世界とは、創っていたり取り扱っている商品による世界観のことではなくて、もう少し広いことです。
例えば、食、住、旅、メカトロ、デジタル、…、こうしたやや大きな括りとしての棲む世界のことです。
こうした棲む世界の中で、今の時代に合わせて本質的価値を探求して事業モデルを変革していく。実のところ、こうした姿勢こそが“棲む世界”の本質でもあります。
ある意味、このような王道な進歩発展が本当の挑戦といえることです。
これを逆から見れば、棲む世界をまるっと変えるようなことというのは、一見、挑戦的に見えますが、破滅への第一歩といえることです。
こうした大きな路線変更の際、安易に異端を目指すというのは、おススメできることではありません。
その理由はとてもシンプルです。その方が楽だからです。
ビジネスにおいて、違い、差別化、ユニークさ…といったことが求められますが、こうした新たなニーズというのは、決してこれまでの世界とは違うところにあるのではなくて、これまでの世界の先にあることなのです。
このことを前提とすれば、これまで…をないがしろにして、「私は人と違う」と異端を志向して王道から外れようとすることというのは、“違い”などではなくて“外れる”と呼ぶべきことです。
ビジネスの成長発展を目指す際、大切にすべきことは、確かな世界への帰属を心に誓うことです。その棲む世界で中心的な役割を担っていこうとすることに対する意思です。
例えば、料理番組。時短料理や節約料理がビジネスとして短命なことは多くを語らずともお感じいただけるものと思います。
それはなぜかといえば、料理、食事、食文化の本質ではないからです。
確かに、時短できたり節約できたりすることは、ニーズとしてあるでしょう。しかし、それは、料理を作ることの目的足り得ないのです。
長寿な料理番組は、決して時短や節約を提案していません。家族や子供、料理を作る相手に対して、この季節にこんな料理はいかがですか…と提案しています。
つまり、料理の作り方を伝えているのではなくて、どんな料理を作ろうかと考えるところをお手伝いしているのです。
やり方というのは所詮、どこまでいっても模倣でしかありません。何と言おうと、いくら他社と違う、これは新しいんだと言おうとも、所詮、模倣です。
現業の壁を超えていくために拓いていかなければならない突破口とは、異端路線ではなく王道路線にあります。
異端は、簡単に“違い”を手に入れることができますが、決して長寿な商売にはなりません。
まずは、棲む世界を広めつつ、その世界で王道を歩む意志を固めることが大切です。その棲む世界の中で進歩発展を考えることで必ず現業の突破口を拓いていくことができます。
現業突破は長寿ビジネスを目指していますか?
安易な異端を目指すことなく棲む世界を広げる王道を歩みませんか?