【第393話】応援購入な営業トークが経営を滅ぼす

「パンフレット、ほぼ全面的に作り直しになった時は参ったと思いましたが、作り直してみて、見比べて…その意味がやっと分かりました」とプロジェクトマネージャー。

 

とある企業が、間もなく、とてもユニークな自社看板の新商品を世に打ち出します。

 

こちらの企業、ある分野で地域シェアNo.1を誇る技術をお持ちです。今回は、その技術の用途開発的に新商品を企画し、ユニークな新商品に仕上がりました。

 

そしてもう一つの挑戦は、自社で直販するということです。これまでは製造販売と言いつつも、主に技術力と設備力を生かした製造会社で、明確な組織上の位置づけとして営業組織はありませんでした。

 

こうした状況から、自社存続の命綱を自分たちの手で切り拓いていくとの強い意志を持って、新事業立上げプロジェクトが始まりました。

 

当然のことながら、こうした挑戦的なプロジェクトを進めていくというのは、大変なことです。数々の工夫が要りますし、労力も時間も費やします。時に会議室の空気感が重くなることもあります。

 

実際、新商品の販売開始までに整えなければならないのは商品だけではありません。その生産方法、材料調達、品質管理、知財対応、在庫、輸送梱包、保証、取扱説明書、パンフレット、販売チャネル、WEBサイト、決済方法…多岐に渡ります。

 

だからこそ、こうした全体が整ってきて、販売開始が目前ともなれば、これまでの苦労と一種の興奮を覚えるものです。

 

ところが、こうした心理状況が詰めの一歩を間違った方向へと導き始めます。

 

その間違った方向とは、「私たち、こんなこと頑張ってやってきました…」の文脈で新商品を説明してしまうことです。

 

販売とは、お客様にご購入いただくことであって、それは、お客様の理解を得ようとすることとは違います。

 

昨今、販売、営業、マーケティングの分野で「ファン」といった考え方が、こうした間違いを助長します。

 

というのも、ファン化とは、かつてブランド認知やブランドロイヤリティと呼んでいたことです。こうした概念をネット時代に対応して進化させて、アフターサービスのみならず商品レビューや口コミといったことにもしっかりと対応していきましょう…ということです。

 

ところが、「ファンになったら買ってもらえる」などと考えて、販売活動を理解活動にしてしまいがちです。

 

こうしたファンという考え方は、従来からのブランド化やカスタマーリレーションシップを、デジタル時代に対応進化させたものとの理解しておくのが良いでしょう。

 

この間違い、販売開始直前の罠に堕ちてしまう理由は、実にシンプルです。それは、頑張ってきたことを理解してもらいたい、「応援されたい」と思ってしまうことです。

 

これが間違いの原因です。我々は「お客様を応援する」のが仕事です。上から目線で「応援してください」などという立場にありません。

 

こうした「応援されたい」心理は、例えばクラウドファンディングのプロジェクトに如実に現れます。活動を応援してもらうための募金集めになっているはずでず。

 

一方、しっかりとした新商品のテストマーケティングであれば、新しい提案としてお客様への応援メッセージになっているはずです。

 

大切なことなので総括するならば、我々はお客様を応援するのが仕事なのです。そうであるならば営業トークは、お客様への応援アプローチ、貢献を語る意識が肝心です。

 

人は人のために働く時に力を発揮します。確かに「私は素晴らしいことをやっているので応援して欲しい」も一巡すれば人のため…かもしれませんが、ことビジネスという視点から見れば、力の出し方を間違っているといえるでしょう。

 

応援してもらうよりも先に応援しようとしていますか?

お客様への貢献を通じて世の中に貢献しようとしていますか?

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