【第376話】本物の成長を目指す中小企業のリーダーシップPM理論

「スタッフは良く育ってくれています。しかし、会社と従業員の未来を託せる経営者クラスとなると、なかなか難しいもんですよね」と社長。あと数年で社長を譲りたいと考えておられ、内部昇格者を候補としつつも外部も視野に内々に人選を進めています。

 

こと経営者、社長ともなれば、その采配次第で会社を沈没させることもあり得るのですから、経営者に求められるリーダーシップとは極めて複雑なものです。

 

時に温厚でありながら必要とあらば冷徹非情であったり、信念を貫きつつも時には清濁併せ呑むような、ある種の強さを必要とします。

 

まず日本企業、特に中小企業の経営リーダーシップを語る上で、前提として整理しておかなければならないことがあります。

 

それは「働く」と「労働」の違いです。補足するならば、仕事に対する価値観の違いといえることです。

 

日本人にとって仕事とは「労働」というよりも「働く」に近いことです。ここで「働く」とは自身の所属するチーム、会社、地域…こうしたメンバーへの貢献意欲といえるでしょう。

 

一方、欧米人にとって仕事とは、「働く」というよりも「労働」に近い概念です。ここで「労働」とは、誰かが決めたことをやらされる…といったところでしょうか。

 

実際、欧米ではジョブ型と呼ばれるとおり、誰かが作った仕事がまずあって、それは詳細な職務記述書(ジョブディスクリプション)になっていて、その仕事に人が採用される構図にあります。

 

反対に日本のメンバーシップ型は、採用にあたってもまず大まかに求める職務があって、その後は、社内の様々な仕事を経験しながら育てていくジョブローテーションは当然のことと認識されています。

 

ですから、仕事に就くこととは限りなく「会社に入る」、「会社のメンバーになる」ことを意味します。

 

まずこうした仕事観の違いを知る事なくして、企業理念、経営計画、就業規則、組織規程…といったものを定められるはずもないことは明白です。

 

このため、リーダーとして、自社の経営が「働く」と「労働」、どちらの仕事観に軸足を置く企業文化なのか…といった経営者の心積もりが大切です。

 

そして当然ながら新事業プロジェクトといったことの運びも、こうした企業文化、仕事観といったことを無視して進められるはずもありません。

 

ここで、古くから知られるリーダーシップ論に「PM理論」があります。Pはパフォーマンスで目標達成、Mはメンテナンスで組織維持のことです。

 

このリーダーシップをPとMの強さを大文字・小文字で表し、PM型、Pm型、pM型、pm型の4つに類型していて、理想的なのはPM型であるとされています。簡単そうに聞こえますが、このバランスというのはとても難しいことです。

 

ただし、一つだけハッキリと言えることは、古い村の長老ならばM型で良いかもしれませんが、こと民間の事業経営体の長であるならば、求められるリーダーシップはP型寄りであることが求められるのは言うまでもないことです。

 

ここでまた難しいのはP型、パフォーマンス、目標達成にも様々な尺度があるということです。事業経営という視点で、パフォーマンスの尺度として分かりやすいのは質的・量的という切り口でしょう。

 

例えば、質的とは、新製品売上、カイゼン取組数、粗利益率…といったことであり、量的とは、店舗数、従業員数、売上・利益…といったことです。

 

面白いことに、パフォーマンスの尺度が量的であった場合、その経営上のメッセージは、量が優先されるが故に限りなくM型になりがちです。

 

みんな、仲間、笑顔…、こうしたメッセージはあくまでも組織維持、M型リーダーシップであり、本当の意味でパフォーマンスを上げようとするならば、質的なパフォーマンス尺度から、P型リーダーシップの姿勢を見せることが大切です。

 

このご時世にあっても企業文化は「働く」を目指していますか?

量よりも質で強いパフォーマンス組織を目指していますか?

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