【第375話】事業モデル、事業スキーム…混同していませんか?

「いろいろと考えてみたんですが、こんな提供方法、いかがでしょうか?」とお考えいただいたのは、新商品のレンタルでした。

 

新商品の企画、新事業の構築にあたって、商品サービスのみならず付帯するサービスやその提供方法まで考えていきましょうとお伝えしています。

 

ここでお伝えしている提供方法とは、実体的な部分、物理的な提供方法、新商品をどのようにお客様にお届けするのかということです。

 

確かに、レンタルもお届け方法ではあるのですが、レンタル、リース、サブスク…といったことというのは、収益化の方法、課金の仕組み、支払い方法…といったビジネスの金目の部分です。

 

こうしたビジネスの金目の部分は、いわばスキームと呼ばれる領域であって、昨今の事業構築において重要性が増していることは言うまでもありません。

 

実際、不動産や金融の世界で、このスキームこそが新サービスの核であったりします。

 

ただし、それ自体が新事業の核となった場合、そのビジネスは極めて歪んだものになりがちです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、新事業といいつつ、商品サービスに目新しい付加価値はなく、そのビジネスの金目の建付け、儲け方だけ違うという商売は果たして新しいのか…ということです。

 

例えば、飲食店の出店にあたり「居抜きで初期コストを抑えて出店する」という金目のスキームを中心に、「提供する商品はこれまで程度」だったとしたら…その事業モデルは果たして新しいものといえるのでしょうか。

 

少し考えれば分かることですが、事業モデルが新しい…の核には、常に商品サービスの更新、付加価値の向上がまずあって、その付加価値の更なる向上に向けた創意工夫として、提供方法、スキーム…といったことがあるということです。

 

ここで、商品サービスはこれまで程度のまま、その提供方法だけ、あるいは課金スキームだけを考えて、新たな事業モデルを構築しようとするとどうなるか…といえば結論は決まっています。

 

その結論とは、“安売り”です。結局のところ、これまで程度の商品サービスをもっと売ろうとすれば、安くするしかない…とう結論に至ってしまうのは火を見るよりも明らかです。

 

そして、安売りによる収益性の低下を補おうと、事業スキームが検討され、商品サービスの消費者・利用者からの対価以外の収益を考えようとし始めます。

 

例を挙げると、フランチャイズ展開して、その加盟店から収益を…といったことです。

 

さらにややこしいのは、安売りを通り越して、商品サービスをタダに…という場合です。

 

例えば、情報誌はタダで、そこに広告を載せる側が代金を負担したり、大学のコピーが無料で用紙の下に広告が入っていたりするような場合です。

 

こうなると、もはや商品サービスの消費者・利用者からの収益は無くなりますから、その事業を支える収益は、まったく別のとこから…ということになってしまいます。

 

このように、新たな事業モデルの構築にあたって、商品サービスの創意工夫をさて置いて、もっと売ろうという意識が先行して検討を始めると、安売りに走りがちです。

 

そして、これに続いて、事業スキーム、金目の検討が始まると、いずれ「誰にカネを出させるか…」といった言葉が平気で飛び交うようになってしまうのです。

 

事業経営とは商品サービスの提供を通じたお客様活動です。スキーム検討も大切ですが、いつしか第三者からのカネ集めのテーマ探しになってしまわぬよう意識することが大切です。

 

これは逆から言えば、お客様への商品サービスの提供、お客様への価値提供を最大化する意識、御社とお客様の二者間で価値の交換を行うことから逃げない意識といえるでしょう。

 

事業モデル構築の核に商品サービスがありますか?

事業スキームに頼りすぎてお客様不在になっていませんか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム