【第377話】これから10年、逆転の生き残り戦略

「政策に売りなし…だからね。もうそっちに舵を切っていくしかないかなと思ってるんだけど、どう思う?」と、とある商社のご重鎮。

 

政策に売りなし…とは、株式取引における格言で、国が力を入れる政策に沿ったビジネスや企業は値下がりしにくく値上がりが期待できるということです。

 

当然のことながら、これは株式投資で一儲けの話をしているのではなくて、これからの経営の方向性についてのことです。

 

そしてここで“政策”と言っているのは「カーボンニュートラル」のことです。

 

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しています。世界的な動きを背景に、日本でもその目標達成に向けて動き始めることとなりました。

 

ちなみに、物事の計画はまず悲観的に考えることが大切です。よって、このカーボンニュートラルの影響を悲観的に見て、それからその先にある逆転劇を考えてみましょう。

 

このカーボンニュートラルについては、その目標達成の手段レベルだけで議論されがちです。例えば、エネルギー分野では再生可能エネルギーの導入を進め、車を電気自動車にして、住宅をもっと省エネにして、船や飛行機などは水素などで代替していく…といったことです。

 

このため、多くの人は「エアコンの設定温度を変えて省エネすればいいのね」、「2050年までに車を電気自動車に買い替えればいいのね」、「家を立てる時に太陽光パネルを付ければいいのね」くらいに考えていますが、ことはそう簡単ではありません。

 

工学技術に一定の理解を持っておられる方々ならもう分かっているはずです。それは、カーボンニュートラルという目標が、インフラを含めて今の文明社会を基盤から丸っと作り替えることに匹敵する超難工事だということです。

 

これはある意味、歴史的な転換点であり、そしてその歴史的な転換点の入口が今年です。その位、重大なことです。

 

ちょっと考えれば分かることですが、この実現は相当に困難な道であり、企業に変革を迫る面倒な問題でもあります。

 

実務的に考えれば、2050年までに実装を完了させるためには、その10年以上前には計画フェーズを終わらせて実装フェーズに移っていなければなりませんから、そのことを考えればこれからの10年、特にその前半であるこれからの5年ほどで次代の大筋が決まっていくということです。

 

多くの企業は望むと望まざるともう舵を切り始めています。こうした大変革というのは、挑戦者にあっては機会となり得るからです。ただし、経営において、環境適合が大切と言われますが、これは言うは易く行うは難しいものです。

 

それには構造体な理由があります。それは、環境適合が、ある意味で未知の外部を取り込むことであり、それは勇気の要ることだからです。

 

大切なことなのでもう一度お伝えすれば、カーボンニュートラルは、国民生活や企業経営を一変させる一大事だということです。

 

このため、今、「当社はあまり関係ない」と思っていたとするならば、経営計画がどれほど緻密であったとしても大切な視点が抜け落ちていると言わざるを得ません。

 

カーボンニュートラル、これが一大事であると分かったとして、その先が大切です。面倒なことだから関わらない方に逃げ切る舵取りをするのか、あるいは、未知の世界ながら取り込む方向に舵を切るのか…ということです。

 

これまでの経営計画をカーボンニュートラルの視点から見直してみることが大切です。既存事業にあっては、材料の仕入れや価格はどう変わるのか、生産体制はどうしていくべきなのか、物流にどういった影響があるのか、新たに獲得すべき顧客層は?新事業にあっては自社の技術能力を活かしてどのようなビジネスを生み出すことができるのか?

 

カーボンニュートラル、そんなに大きなことだったの…と出遅れないためにも、面倒を逆転して新たなチャンスにするためにも、直ちに経営計画に織り込むことを強くお勧めします。

 

環境適合の意識でカーボンニュートラルを見ていますか?

面倒こそビジネスチャンス…と取り込んでいますか?

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