【第372話】“おカネ”を食うカイシャを飼いならす投資レバレッジ戦略

「今回、〇億円の工場を建設しましたが、これに続いて××県に〇億円規模の工場建設も予定しています」と社長。

 

お話をお聞きすれば、単発の設備投資ではなくて、まず素晴らしい成長シナリオがあって、その実現に向けて一手一手、次なる戦略投資に賭けておられます。

 

常々、経営は賭け、投資だとお伝えしています。ただし、ここで投資とは、一か八かのギャンブルのようなものではなくて、しっかりと準備構想して、勝算あるシナリオを持って、その実現に賭けていくということです。

 

決して、誰かの勝負に伸るか反るか…ではなくて、自ら描く未来を実現していくために、ある意味、自らに賭けていくという点で、根本がギャンブルとは異なります。

 

カイシャという法律上の人格は、おカネを食べて生きています。

 

実際、創業やゼロイチで事業を立ち上げた経営者であれば、その立ち上げ期に、通帳のおカネが凄いスピードで減っていく恐怖と戦った経験をお持ちのはずです。

 

カイシャは、今を維持するだけでも莫大なおカネを食べる生き物です。このため、もっと成長を目指したり、変わっていこうとするならば、今以上のおカネを食べる必要があることはお分かりいただけるでしょう。

 

成長の道を志すにあたって、この成長資金をどのように求めていくかということは、実務的に極めて重要です。

 

具体的には、成長の資金調達を、出資、借入、補助金といったカイシャの外に求めるのか、税引後利益、減価償却といったカイシャの内に求めるのかといったことです。

 

単純な話ですが、カイシャが多くのおカネを食べれば、その分だけ早く成長するということです。

 

これを逆から言えば、多くのおカネを調達できれば、早く大きく成長することができます。このため、経営者の判断として大切になのが、金融面から成長するのか、実体面から成長するのか…そのバランスを見極めることなのです。

 

ちなみに、経営慣れしてくるほど外のおカネを活用する傾向が強まります。もちろん、経営者とは資金提供者からすれば、その資金の運用者であるため、使ってもらったり借りてもらわなければ困るという現実もあります。

 

実際、「この前話してたあのビジネス、銀行から借りられなかったからやれないことになった」と仰る社長も多いのです。

 

企業ファイナンスの世界において、財務レバレッジという用語があります。レバレッジとは梃子(テコ)のことです。

 

これは簡単にいえば、将来的な売上利益を信用として、どれだけおカネを借りてきて経営を大きくできるか…といったことです。このため、「借りられるのが経営者の甲斐性」という誤解がまかり通ることとなります。

 

経営は投資ですから、まずおカネが先に出て後から返ってくる構造にあります。今日このカネ食いが、今日を維持するための食事なのか、将来のリターンを生むための食事なのか…、ここに経営姿勢の違いが現れます。

 

こうしたおカネの食べ方は、成長戦略において重要な意識です。経営ですから白黒はっきりしない正解のない世界で上手くやらなければなりません。

 

ただし、本当の意味で伸びているカイシャというのは、利益を生み、税金を支払い、その内部留保から株主配当を支払い、その残りを再投資して内側から成長してきた企業だということです。

 

時に“外”からの食事提供で食いつなぐ金融的な場面も必要ですが、いずれ“内”から稼いで食えるようになる実体的な筋トレが大切です。

 

内から稼いで食えるようになる筋トレ、実体的な成長に賭ける意識が、本物の投資と呼べるおカネの食べ方といえるでしょう。

 

今日食べたおカネは未来の筋力につながっていますか?

経営の資金は外よりも内を優先していますか?

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