【第362話】事業を伸ばす経営者の明るさの正体

「あの事業は、結果、辞めることにしました…」と親しくさせていただいている某社長。とある既存企業を事業継承的にM&Aしてグループ会社にして、軌道に乗せるまで自ら社長を務めようと考えておられました。

 

「ご縁がなかったのではないですか」とお伝えしたならば、「実は、少し違和感を覚えていて、良かったと思っている」と明るいご様子に安心させられます。

 

こちらの社長、いつもパワフルで“明るい”ことで有名です。知るだけでも幾多の困難を乗り越えておられますが、その都度、ご自身の責任と受け止め、粛々と身を清めるかのような対応に、いつも頭が下がります。

 

概して、事業を成長に導く社長というのは、一種の“明るさ”を持っておられます。

 

この“明るさ”というのは当然のことながら、楽天的、能天気、軽さ…といったこととは根本が違います。

 

では、この明るさとは一体どういった類のものなのかと考えたならば、そこには共通する根源的なことがあることに気が付きます。

 

それは、持って生まれた性格的なものというよりも、むしろ理想を持っているか否かという状態によるところが大きいことです。

 

理想がもたらす“明るさ”が、単なる能天気といったことと違うのは、理想を目指すために追加的な努力、いわば進化を自らに強いているところです。

 

もう少し掘り下げて考えるならば、理想といえば、大抵の場合、未来を想起させますが、現状や過去に理想を持つ人もいるということです。

 

理想にはとてつもないパワーが宿ります。この描く理想が未来であれば良いものの、現状や過去であったならば…ということです。

 

例えば、「昔は良かった」、「今のままがいい」といった理想の描き方は、進化のパワーというよりはむしろ否定のパワーにつながっていることをお感じいただけるものと思います。

 

端的にいえば、現状や過去を理想とする場合、理想を目指す態度は変化を否定する方向へ働いてしまうのです。

 

ここで、変化や物事の普及という過程に目をやれば、「イノベーション普及モデル」が知られています。

 

これは、変化への態度、アイデアの普及拡散をモデル化したもので、5つのグループに分かれるとされています。

 

新しいことに興味を抱き最初に受け入れるグループ「イノベーター(革新者)」2.5%、これに続いて新しさを受け入れるオピニオンリーダー層である「アーリーアダプター(初期採用者)」13.5%。ここまでを合わせて15%ということで、この15%が「新製品普及の壁」、「キャズム」と呼ばれたりします。

 

さらに、これに続いて概ね変化が分かってきてから受け入れる「アーリーマジョリティ(前期追随者)」34.0%、さらに続いて変化に懐疑的ながらも追従する「レイトマジョリティ(後期追随者)」34.0%、さらに、最後まで変化に否定的な「ラガード(遅滞者)」16.0%というものです。

 

いかがでしょうか。本モデルから分かることは、変化や新しいものの普及を、ある程度、受け入れる層というのは15%しかいないのです。逆から見れば、85%の人は、変化に対して常に懐疑的なのです。

 

これは、マーケティング分野で、いわば顧客のプロファイルモデルとして知られていますが、仮に統計の母集団を経営者としても、結果的には近しい割合を示すことでしょう。

 

現状や過去に意識を置いて、世の中が間違っている、こちらが正しい…といったことというのは理想というよりも感情に近いものといえることです。

 

理想とは未来を信じる心です。それは同時に変化を受け入れ、その変化に対応していこうとする向上心のようなものであり、その先にある未来、もっと素晴らしい世界への好奇心で、変化から生まれる不安を超えていくことといえるでしょう。

 

経営が85%に媚びてしまっていませんか?

15%の側で明るい未来に理想を掲げませんか?

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