【第361話】成功するまでやる…はブラックなのか!?

「ではミーティングを始めます」と社長、出張先の旅館から、月曜日の朝、今週のミーティングが始まりました。聞けば、IT企業だけあって、ほとんどの社員がテレワーク。このミーティングも国内のみならず海外にもつながっています。

 

昨今、図らずもテレワークの推進が必要となり、「ジョブ型」ということを耳にします。

 

働き方において、「ジョブ型」とは、労働時間ではなくて予め約束した果たすべき職務の遂行度、いわば成果で評価する制度です。感覚的には欧米的な雇用形態といえるでしょう。

 

これに対して、日本的経営は「メンバーシップ型」といわれてきました。言い換えるならば家族的経営といえるスタイルです。

 

どちらが良い悪いということではなくて、ジョブ型は「“仕事”に人を合わせる」のに対し、メンバーシップ型は「“会社”に人を合わせる」ような考え方といわれています。

 

ここで根本的な問題は、「自分が変わる」ことがイヤな人にとっては、どちらもイヤだということです。

 

ところで一昔前まで、日本的企業の特徴である「三種の神器」といえば、終身雇用、年功序列、企業内組合といわれてきました。

 

これらを文脈体に捉えれば、社員を終身雇用して手塩にかけて、年功序列的な立身出世で会社を支える人材へと育て、労使関係を超えて組合もその育成に協力してきた、といえるでしょう。これを要約すれば「会社が仕事を通じて人を育ててきた」ということです。

 

こういった歴史的な価値観から、今、経営者に突き付けられている働き方改革とは、「従業員に対する“育成”をどう考えるか…」という一言に尽きるということです。

 

ここで、もう少し前提を整理すれば、大した従業員育成を要さないような事業フォーマットもあります。それは、従業員の多くが“アルバイト”の仕事です。ここでの議論は従業員の多くが“正社員”の仕事を念頭に置いています。

 

このような整理を経て、働き方を人材育成という視点から見れば、「ジョブ型」とは従業員ご自身で職業トレーニングをして目指すジョブ(仕事(給与))の獲得を目指すことになります。一方、「メンバーシップ型」では会社が仕事を通じて従業員の育成を担います。

 

さらに、このことを突き詰めて考えれば「ジョブ型」と「メンバーシップ型」で根本的なマネジメント上の違いが見えてきます。

 

それは何かといえば、人材育成、職業トレーニングの時間が、労働時間に含まれているか否かの違いです。

 

職業トレーニングについて、「ジョブ型」は従業員自らが仕事を獲得するためにご自身で取り組むべきことなので労働時間には含まれません。反対に、「メンバーシップ型」は、仕事を通じて育成されるため、その一部は労働時間に含まれていることになります。

 

成功法則として常々、言われてきたことがあります。それは「失敗は成功のもと」、「成功するまでやれば、それは失敗ではない」といった類のことです。

 

今、これを経営者が口にすれば直ちに“ブラック”といわれます。それは従業員に“過程”ではなくて“結果”を求めていることになるからです。これを従業員の立場から言い換えるならば、「約束は労働時間であって結果ではない」と。

 

仕事とはお客様への結果責任です。従業員の全員が過程責任だけで結果責任を負う人が誰もいなかったとしたら、それは仕事と呼べるものではなくなってしまいます。

 

経営者は、こういった働くことへの価値観の多様化に対応していくことが求められています。そして、この対応策としては、どちらかを選択できる人事制度にしてしまうことをおススメしています。

 

トーマス・エジソンはこう言っています。「一日8時間労働制に感じた危機感は、労働時間の不足などではない。働くということが、ただの決まりきった作業になってしまうということだ」と。

 

経営者として、従業員に「育成する代わりに長い目で見て結果を求める」のか、あるいは「育成を諦めて作業だけをお願いするのか」。成長発展戦略の分岐点となる重要なことです。

 

従業員の成長可能性に賭けますか、あきらめますか?

結果か、過程か、働き方を選んでもらえる制度を準備していますか?

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