【第265話】設備投資で後悔しない経営を伸ばすための準備意識
「〇〇設備を導入すれば、新製品が作れるようになるんです」というご説明をお聞きすることがあります。
常々、「経営は投資である」とお伝えしていますとおり、経営を伸ばそうと考えるならば、労力、時間、おカネ…そういったリソースを、次なるビジネスチャンスを切り拓いていくために投資していかなければなりません。
これはある意味、投資が経営の未来を大きく決定づけ、それは取り返しにくい決定であり、その判断や投資時点での準備意識が、その成否に大きく影響します。
新製品開発投資、在庫投資、工場店舗投資、広告投資、人材採用投資…、様々な投資の中でも、特に決定の影響度が大きいのが「設備投資」です。
設備投資は、金額も大きく、またその影響期間が長いのが特徴です。影響期間が長いとは、設備耐用年が長いという意味でもありますが、資金が設備に固定化される、資金繰りが難しくなるという意味において、経営上、極めて重要な影響力を持ちます。
実際、設備投資に失敗し、その借金返済のために辞めることさえ許されないような状態が長く続いている企業もあります。何事も行動してみなければ分からない、挑戦に意味がある、やってみなはれ…とはいかないのが設備投資なのです。
その昔、設備投資を進める政策を高度化と呼んでいたことからも分かるとおり、設備投資は、企業の労働装備を充実させることで生産性を向上させてきました。
具体的には、新製品を作れるようになる、これまで人間がやっていたことを自働化できる、品位のレベルが向上する…といったことであり、これらが新たなビジネスチャンスをモノにしていくために欠かせないことであることは言うまでもありません。
ところが、多くの企業が設備投資で失敗します。失敗とは、つまりこういった当初の目論見を達成できず、経営が行き詰まっていくのです。なぜ、そうなってしまうのか…。
その答えはとてもシンプルです。設備投資時点での準備が足りていないのです。
設備投資にあたって大切なことは、「生産性の向上」です。しかしこれを、新しい製品が生産可能になることや、コスト効率化と勘違いしていたらどうなるかということです。
本来求めるべき生産性の向上とは、例えば、製品売価の向上、製品あたり粗利率の向上、延いては従業員一人当たり売上高の向上といった、労働投入に対するアウトプットの向上を目指すものです。要は付加価値の創出度を上げていくことです。
これは、設備投資を手段として、自分たちのアイデアをどう実装していくのかということを意味します。事業アイデア、付加価値を生み出す創意工夫や切り口、そういった準備があって初めて設備投資を成功させていくことができるのです。
難しい話をしているのではありません。ビジネスはあくまでも人間の創意工夫が生み出すものであるという至極当然のことをお伝えしています。
この認識に立てば、設備はあくまでも経営者のアイデアにレバレッジをかけて実践していくための道具であって、設備自体がビジネスを生み出してくれるのではないのです。
生産性向上の本質とは、創意工夫です。あえて皆が面倒と思うようなビジネスチャンスに挑み、もがきながら考えて付加価値を生み出し、結果、企業としての競争力を高めつつ、経営者としての才覚を磨いていこうとする極めて修行的な努力投資です。
設備があれば設備が勝手に稼いでくれる。経営者として夢のような瞬間…、事実、こういった状況は起こり得ます。ただしその状況は永くは続きません。それは、世の中のある瞬間、需要に対して供給が足りてないというだけです。
それに気付いたという嗅覚は素晴らしいとして、そのアンバランスな状況は後発の参入ですぐに消失していきます。その先にある本当の勝負のために準備しておくことが大切です。
設備投資にあたっては、生産性向上のアイデア、付加価値を高める創意工夫が成功の要であり、設備はそれを実践していくための道具に過ぎないということをお忘れなく。
新事業で生産性向上していますか?
設備投資の中心に勝負を賭ける創意工夫がありますか?