【第259話】理系ビジネスを発展させる営業力の高め方

「ウチは営業しなくても注文が入るんです」というお話をお聞きすることがあります。もちろん、営業しなくても注文が入るということ自体は、いわば究極の経営スタイルですし、実績と信頼の証として素晴らしいことです。

 

しかし、こういった場合、すぐに分かることがあります。それは、この企業の収益性です。なぜそれがすぐに分かるかといえば、商売が自社の能力を商品サービス化・価値化して販売しているのか、自社の能力をそのまま売っているのか、という根本的な違いがあるからです。

 

価値提案の商売で「営業しなくても注文が入る」ということは、商品サービスやそこから生まれる便益に選ばれる理由があるということです。これは、営業活動として先に商品サービスの開発努力があるということですし、同時に選ばれた時点で価値が認められたということであり、したがって販売価格は売り手側の主導となり、よって高収益の可能性が宿ります。

 

そして実のところ「営業しなくても…」という文脈は、全く営業していないのではなくて、いわゆる営業活動、人的販売が不要なほどに商品開発に投資しているという意味なのです。

 

一方、請負受託の商売で「営業しなくても注文が入る」ということは、確かにその能力の高さや実績が受注理由になっている部分もあるでしょう。しかし、請負受託というビジネスの本質を突き詰めれば、お客様の代わりにその仕事を実行する代行業ということです。

 

この構図にある限り、例えどれだけ能力が高かったとしても、お客様がご自身で実施するコスト以上の支払い意欲が存在しない市場に身を置いているということです。

 

つまり、営業しなくても御社に声が掛かっている理由を考えるならば、最終的な購買決定理由は自分たちでやるよりも安い…、つまり、なんと言おうと価格だということです。

 

能力を身に付け高めてきたこと自体は大変な努力を伴うことですし尊敬に値することです。だからこそ、その高い能力を持ちながら低収益に甘んじておられる状況を「勿体ないのではありませんか」とお伝えしています。

 

この傾向は特に、製造、ITシステム、建設、食品…、「理系ビジネス」において顕著です。

 

「能力や技術の高さ」で勝負しようという発想は、仕事需要に対してそれを実行できる企業が少ない場合を想定しています。つまり、需要が先にあってそれに応える技術力の供給が少ないことによる希少性が売上利益の源泉だということです。

 

しかし、よく考えていただきたいのですが、経営が「お客様活動」であることの前提に立てば、能力自体でお客様のお役に立つのか、能力をお客様のために応用してお役に立つのか…、これらが似て非なるビジネスであるということは言うまでもありません。

 

売上だけでなく利益を生むという大きな方向性を考えるならば、「技術を応用して価値に転換する」ことが欠かせません。

 

これは、いずれ自社独自の商品サービスで付加価値向上の勝負に挑むことですが、短期的にまずでき得る付加価値活動は「お客様のムチャぶりに応える」ということです。

 

このムチャぶりとは、やればできるけど面倒な仕様変更とか、頑張れば何とかなる納期とか、もう一声の出精値引き…といったことではありません。あくまでも相当に困難な技術的なムチャぶりに「できます」、「やります」と応えることです。

 

当然のことながら、経営はお客様活動です。お客様のムチャぶりこそ目の前に生まれたビジネスチャンスであり、これこそが「理系ビジネスの新市場の現れ方」の正道です。

 

理系ビジネスの経営者はどうしても判断が堅実故に、せっかくの新市場を「やったことがない」、「技術的課題がある」、「おカネになるかどうか分からない」、最終的には「できるかどうか心配」、「面倒くさい」といったことで敬遠しがちです。

 

しかし、お客様のムチャぶりに応えていくことほど、堅実着実な成長発展の道は他にないはずです。これに応えさえすれば新市場は独壇場です。そもそも論として、新市場を“開拓”するとはこういうことのはずです。最前線での成長発展の実態とは、決して聞こえのいいイノベーションなどではなく、極めて泥臭い、恐怖心、不安、葛藤…、こういった自己克服のプロセスによる挑戦領域の拡大です。

 

ただし、利益とは付加価値から生まれるもの。ここでも価値を売るとは「お客様の期待」が需要なのですから、「それを超える応え方」を目指す意識が大切です。

 

技術そのものよりも、その応用でお客様に応えようとしていますか?

「ムチャぶり市場」を成長市場と捉えていますか?

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