【第25話】一歩抜け出す経営計画の勘所
大企業の活動は良くも悪くもほとんど“計画”で動いています。どんな方向に向かって、何をやっていくか。そのために必要な人員は、投資は、予算は。。。といったことをまとめたのがここでいう計画です。そういった意味では、大企業における計画とは方針に近い意味合いと捉えることもできます。
株主総会では計画や方針をめぐって、委任状の争奪戦、いわゆるプロキシーファイトが繰り広げられることも多くなってきました。
そのくらい、経営においてその活動を規定する“計画”は重要性を増しています。これは経営がより頭脳戦になってきた証左でもあります。縦割りの組織機能の各々や現場の頑張りだけで何とかなる時代ではなくなっています。
私は、常々「計画は大切」と申し上げております。しかし、経営者方によって、その反応はまちまち。無論、計画書を作ることが目的でないことは確かです。では、どんな意味があるのでしょうか。
肯定的な考えとしては、事業展開を考えてとりまとめたもの、新商品開発の進め方、資金・損益シミュレーション、金融機関等外部への説明資料、販売拡大の道筋、広告と予算、人員の採用・配置。。。こういった視点から計画の必要性を認識されています。
一方、否定的な考えとしては、そもそも計画をまとめても一銭にもならない、計画としてまとめなくても頭の中に入っている、組織が小さいので話せば伝わる、そんなことを考えている時間があったらやった方が早い、計画があっても商品がなければ商売にならない。。。といった視点で計画の必要性が乏しいことを指摘される方もいらっしゃいます。
このような否定的な考えも状況によりご尤もだと思います。いつでもどんな時でも、先ずは計画を立ててから動きましょう、と申し上げているのではありません。どのような場面で計画が特に重要と申し上げているか。
それは、新事業の営業開始、新商品の販売開始の時点です。これまでと異なる世界に飛び出す場面ということです。経営のテコ入れ場面では事業を計画化することを強くおススメしています。
新事業を準備したり、新商品を開発したり。。。全く新しい取組を進める場合、やっている事のほとんどが「試行錯誤」ですから、そもそも試行錯誤をどう計画化するのかという笑い話のような疑問が残ります。
ですから、開発・準備フェーズで試行錯誤を積み上げ、売りモノ・売り方・売り先を創り上げていき、販売開始時点にはこれまでの試行錯誤の結果がこれからの“計画”としてまとめられている、という状況を目指しましょう、というのがお伝えしたい主旨です。
少し話は変わりますが、エンジニアはモノを作ろうとすれば、まず、そのモノに求める状態・性能を定め、必要な計算をしてから製造にも配慮しつつ図面に落とし込んでいきます。ここで重要な視点は、モノがリアルな世界に出る前に、既に図面というバーチャルな世界で出来上がっているという点です。
そうです。計画書とは設計図です。事業の構想を現実へ落とし込んでいくための設計図なのです。図面に落とし込むことで必要な部品やその点数、加工法、表面粗さといった必要事項の全体を漏れなく準備することができるのです。
重要な「事」にあたっては、設計図を描くという手順が大切です。事業構想を計画化という手順を通じてリアルな世界へと投影していくのです。
最終的にビジネスはやってみなければ分かりません。しかし、計画が立てられているという事は、もうある程度「見えている」ということです。その事業についてとことん考え抜いていなければ計画は策定できません。考え抜いた証として計画がまとめ上げられていくのです。
やってみなければ分からない派の一番の問題は、考えが「今」、つまり目先に収束し「未来」を展望できない点です。儲かる計画を策定したければ、少し遠い未来に視点を置き、想像するのがコツです。
「何をやるのか」と考えると今を見てしまうため、計画が単なるアクションプランに成り下がってしまいます。視点をやや未来に置きそこに向かって「何をやっていくのか」とその先を考えることで展開を想像できるようになります。そうすることで一歩抜け出して売れていく姿が見えてきます。
御社ではどんな方法で未来を見通していますか?
御社独自の設計図は描けていますか?