【第247話】新事業をできるだけ高いところから打ち出すための絶対プロセス
「新事業を開始して早〇年、今期の売上が〇億円を超えました。あの頃、目標として壁に貼っていた棒グラフのとおりになっています」とのこと。着実に新事業を成長させている経営陣が、関係するメンバーをご招待くださり、暑気払いの会食を設けてくださいました。
準備当時のご苦労を知っているだけに心躍る嬉しいお話です。売上はお客様から必要とされているということですし、何よりも独自性高い自社商品での成長は、その企業が世の中で存在感を高めていることでもあります。
これは、独自路線の成長からしか味わうことができない経営者の悦び、特別な満足感といえるでしょう。本物の成長を歩むという難行苦行に耐えられるのは、この悦びを知っているからに他なりません。
だから、独自路線の成長を歩む社長は「仕事以上に楽しいことなどない」と満場一致で口を揃えます。
ここでいう「楽しい」には、とても深い意味があります。考えればすぐに分かることですが、単に「楽しい」のとは根本が違います。「ビジネスのアイデアがどんどんと湧いてくる」といったおめでたいお話を耳にすることもありますが、それは本当の意味でのアイデアではありません。
先にお伝えしておきたいのは、新事業の立ち上げプロジェクトというのは、いつも常に「最後が一番苦しい」ということです。
新事業成長の夢を描き、意気揚々と始まったとしても、いずれ立ち上げプロジェクトの終盤、すなわち販売開始直前には、心臓が口から飛び出るほどの負担がかかります。
これは考えてみれば当然のことでもあります。「マラソンでゴール前のラストスパートが一番キツイ」のと同じです。筋トレでも限界…となってからのもう一回が本当のトレーニング領域であることはよく知られています。
とある新事業プロジェクトでは「これだけ考えて出ないんだから、無いんじゃないのか?」との声が上がることもありますし、絶対に愚痴らないことで知られているリーダーからも「もう壊れる」との悲鳴にも近い意見が発せられることもあります。
しかし、当然のことですが、これまでにない「新しい」を創るのですから、これは記録を更新するのと同じことです。前人未到の最高到達点を目指しているのですから、そのための準備もそれ相応になることは明らかです。
スムーズに販売が立ち上がる新事業には共通することがあります。もうお気づきのことと思いますが、「最後に一番キツイ」ところで「もうひと頑張り」、「もう一捻り」しているということです。
実際、伝統的な材料が新技法によって新しい商品としては出来上がっていたものの、最後にもう一捻りしたことで、世の中への刺さりが深くなり、順調に販売を伸ばしています。
絶対に“ある”のです。「最後一捻りのアイデア」はあるはずなのです。どこかに答えを探そうとしているから見つからないのです。
新しいビジネスがなぜ新しいのかと問われればその答えは単純です。「発想」です。発想が新しいから、お客様は「新商品・新サービス」だと認めてくださるのです。
我々は、お客様に「なるほど」と言わせなければなりません。この「なるほど度」が付加価値であり利益となるものです。
世の中が変化し続けている限り、ビジネスチャンスは常に存在します。しかし、これは「存在するビジネスチャンスを探す」のとは違います。
自ら考え、「新発想」という高さに上ったことで新たなビジネスが生まれるということです。ビジネスを立ち上げるとは、ビジネスを生み出すことであって、どこかにあるビジネスをコピペするのとは違うのです。
本当に苦しくなったとしたら、それは多分ゴール前にいます。そこからは頭のネジを何本か吹っ飛ばして「ゾーン」に入るべき時です。「最後の一捻り」、これが「新発想」に至るための絶対プロセスです。ここで最後に絞り出したのが新事業の核を成す本物のアイデアなのです。
御社の新事業は本物のアイデアを内包していますか?
最後の一捻りで前人未到の最高到達点から販売を開始していますか?