【第248話】本物の成長度を測る大切な基準軸

「この一年で、お客様が全く変わりました」と仰るのは、商品によっては、前年比で5倍、10倍と販売を伸ばしておられる顧問先企業の社長。その表情には手応えと嬉しさに加え、新たな苦労もにじみます。

 

ここで「お客様が変わった」というのは、「お客様に何か変化があった」ということではありません。「お買い求めいただくお客様」、「お取引先様」が以前とは全く違う方々になったという意味です。つまり、お付き合いしている方々が入れ替わったというのです。

 

直販も伸びてきていますし、新たに商品を取り扱ってくださることになった販売チャネルは、どれも名立たる企業ばかりです。昨今では、こちらから営業しなくても、先方から「取り扱いたい」とお声がかかるようになり、そうなれば、商談も極めて効率的に進みます。

 

面白いのは、こうなってくると同業他社からも面談のご相談が入ることです。先輩企業の経営者から「我々の話を聞いて欲しい」、「情報交換しませんか」という、いわばパトロールしておくべき相手先だと見なされている訳です。

 

こういった際、面談に応じるかどうかの判断軸になるのが、まさにこの「同業」という意味の捉え方です。大抵の場合「同業」とは、製造品目や取扱商品で分類されていますが、経営者という立場から見れば、これは全くの間違いです。

 

例えば、回転寿司の経営者と銀座のカウンター寿司の経営者で情報交換をしても、確かに寿司店経営者であっても、これが有意義な時間であることは期待できないでしょう。

 

なぜかといえば、経営者として目指しているところ、価値軸が違うからです。そして、その違いがお客様の違いとなって現れます。これら寿司店は、客層や購入時の顧客心情が全く異なるという意味で、似て非なるビジネスだからです。

 

少し話は逸れましたが、ビジネスにおいて「どういったお客様を相手に商売しているか」は、極めて大切な“分類”です。例えば経営者が面談をするといった場合、同じようなところを目指している経営者同士であれば、いわゆる業種が全く違っても、とても大きな意味を持ち得ます。

 

その理由は簡単です。同じ目的地を目指す者同志として、異なるアプローチから相互補完できる可能性があるからです。これが相乗効果、シナジーの本質です。経営者の意志が相乗効果を生む起点であり、これはいわゆる同業で群れて傷をなめ合うのとは根本が違います。

 

前述の企業が近年行ってきたことというのは、既にカタチとしては出来上がっていた渾身の商品に、更に磨きをかけることです。もう一歩進化させて「更に価値を付加する」ことに腐心してきました。

 

同業他社の経営者からは、「なんでそんな価格で売れるのか?」、「ホントに売れているのか?」というのが聞きたいところ…でしょうが、それが実現しているのは、そういう準備をしてきたからに他なりません。

 

もちろん、「いい商品」かどうかはお客様が決めることですが、その起点はどんな商売でも「経営者の意志」です。

 

この意味において、高付加価値を生み出すのは常に「プロダクトアウト思考」であり、もう少し補足すれば「経営者の目指すところを起点としてお客様に届くところまで準備し切ったプロダクトアウト」ということです。

 

ここまで準備すると、嬉しい変化が起こります。本物の成長が数字として現れてきます。これは同時に、目利きのお客様、価値の分かるプロのお客様を相手にするということでもあります。プロはこちら側の思想を感じ取ります。ですから、こちら側もプロとしての意識をしっかりと持っていることがこれまでにも増して大切になってきます。

 

これが新たな苦労を生むことにもつながります。企業としての思想、お客様に負けないプロとしての意識レベルを、「こちら側」も組織的に高めていかなければならないからです。前述の社長の新たな苦労も正にこのことです。

 

意識を下げれば売上にはなったとしても収益性は必ず下がります。商売はそういう原理原則の下にあるのです。ですから、本物の成長、高収益の実現は意識レベルを上げ、プロのお客様とお付き合いすることでしか成し得ない道だと、覚悟して迷わず進むことが大切です。

 

成長発展に伴いお客様のプロ度は上がっていますか?

売上利益の拡大を意識レベルで上げていますか?

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