【第204話】成功する社長が放つ本物感

突然ですが、皆さまに質問があります。

 

これまでに、試験の問題を作ったことがありますか? あるいは、試験の解答を添削したことはありますか? 多分、多くの方々が、未経験と思います。

 

今の世の中はとても発展していて、多くのことが既に先人たちの努力によって解かれています。よって、それを“知る”だけで、以前にも増して、多くのことができてしまいます。

 

研究の世界では、この先人たちの知恵を自分たちでもできるようにすることを“再現”と呼び、研究の初期段階では、まずここをクリアして、その先を目指します。

 

知ることで大抵のことが出来てしまう今、「上手くいかないのは知らないから」、「知ればできるはず」といった解答者的な思考パターンが生まれがちです。

 

しかし、よく考えていただきたいのですが、これは大きな勘違いです。解答できるというのは、しっかりと勉強して“再現”できるようになった、というだけです。これではまだ新たなビジネスで成果を出せる領域には届いていません。

 

こう聞くと、「そりゃそうだ」とお感じいただけるものと思います。しかし、この“再現”の段階でビジネスがイケる…と勘違いしてしまうことが何と多いことでしょう。多くの経営者が、「私はこれまでの人とは違う。だからもっと“うまく”やれるはずだ」と、やり方のレベルで競争しがちです。

 

これは単に、自分でできるようになった、というだけであって、それは知りさえすれば他社でもできることです。単にやっと追いついただけなのです。これはこれで一旦の嬉しいことではありますが、当然のことながら、新たなビジネス領域はその先にあります。

 

ところで、多くの社長方とお会いする中で、分かることがあります。それは、「ご自身で考えようとしている社長」か、「答えを探そうとしている社長」か、です。

 

「ご自身で考えようとしている社長」が聞きたいのは、「どう考えれば良いか」ということです。つまり、ご自身が設定した問題を解くためのヒントをお探しです。

 

一方、「答えを探そうとしている社長」というのは、「まだ知らないやり方」を探しています。要は、やり方を知りさえすればビジネスになると思っています。

 

確かに、この考え方にも一理ある場合があります。それは、ここでいうやり方が他の誰にも真似できないほどに特殊で高度な場合です。ですが、これはいずれ独自性高いビジネスを目指すとすれば致命的な欠陥を抱えています。

 

というのも、どこか「エンプロイアビリティ(雇用される能力)」だからです。つまり、経営者の根本となる独立心に乏しく、発想の根本に“雇われる”が在るからです。

 

成功する社長はいつの時代にあっても「出題者思考」です。ご自身で“問題”を出題し、その新しい問題の解き方のヒントを探し、ご自身で考えて独自の答えを導き出されます。

 

これまでの努力で“再現”はある程度できていて、さらにその先を目指すために解くべき“問題”をご自身で設定されています。そのため、事業大義、理念、経営目的…といった問題設定自体に先進性と独自性が匂います。

 

なぜそれができるのか…、その理由は簡単です。その世界で極めることを目指されているからです。そのため、成功する社長には、どこかじっくりとした“本物感”が漂います。

 

一方、いつまでも一定の成功に至らない社長は「解答者思考」です。「今度はこれ解いてみよう」と言わんがごとく、出題者が出した問題に“新事業”と称して取り組みます。実は全くにして新しくないし、問題をご自身で設定していないので、解き方を探してしまうのです。

 

解き方を探す経営の根本的な問題は、“再現”の手前をいつまでたってもウロウロし続けることです。出発点となる意識が「解答者思考」なので、いつまで経っても先人たちを超えていけないのです。これがいつまでも成果が出ない理由です。

 

取組み自体は、ご本人にとって“新しい”ので、いつも妙に軽いキラキラ感が漂うのですが、いつまでもじっくりとした“本物感”を醸し出すことができません。いつまでもキラキラしながら…、いつまでも次の問題と解き方を探し続ける…ことになってしまうのです。

 

取り組む新事業の世界で極めることを目指していますか?

問題をご自身で設定してその解き方ではなく「ヒント」を探していますか?

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