【第203話】新事業の見出し方と成長発展の育み方
「この事業は、まだ誰もやってないんです」と、何とも頼もしいご相談。「いいところに気がついたでしょ」といった表情でヒットへの自信がにじみます。
経営者にとって、事業機会を探求していくことは極めて大切です。将来への危機感と、未知の領域に足を踏み入れてみようとする好奇心とが折り重なって、何とも不思議な心境が訪れます。
こういった「やってない事」市場というのは、いつの時代も確かに存在します。
例えば、時代や技術、お客様ニーズの潮目にあって、たまたま隙間ができることで新たな事業機会が生まれるといったことです。
このため、この潮目が埋まるまで事業機会は続くことになります。こうした状態の時、怖いのが、事業を始めるということは、事業アイデアを世に知らしめることでもあり、その潮目に後発組が参入してくることは、ほぼ明らかと考えておくことが大切です。
つまり、潮目の隙間が仮に続いたとしても、その隙間は、隙間そのものが時間とともに埋まっていくか、あるいは後発組の参入によって、確実に埋まっていくということです。
そして、最終的にはお客様と参入者が均衡したところで、経営の本格的な質的競争期に移行していくことになります。
あるいは、「やってない事」市場のもう一つの可能性は、お客様ニーズは確かに在るものの、労働投入に対して事業性が成り立たないようなビジネスだということです。市場は確かに在るけれども、これまで誰一人としてそこで成功できなかったという何とも恐ろしい市場です。
こういった経験則に照らして知るべきは、「やってない事」による新事業というのは、いずれ「時間的に有限」であるということです。つまり、放っておくといずれは終わる運命にあるということです。
そんなこと言われたって…と言わずもう少しお付き合いください。まだ、事業機会を探求するアプローチがあります。
それは、「やれてない事」です。
他社が「やれてない事」というのは、恐らく、自社にとっても大変であることがほとんどでしょう。ですが、そこには偉大なる事業機会が待っています。
「この事業は、誰もまだ「やってない事」なんだ」も経営者としてカッコイイと思います。ですが、もっとカッコいいのは「この事業は他社がまだ誰も「やれてない事」なんだ」の方なのです。
「やれてない事」で新しい事業機会自体を創る。これこそが経営者の“挑戦”の本質だといえるでしょう。
「やってない事」も事業機会ですが、これはいずれ生まれながらにして短命であるという法則の下にあります。そしていずれ競争ステージは、「やれてない事」市場の領域に入っていくということです。
いずれ、「やれてない事」市場でやっていくことになるのですから、最初から「やれてない事」市場を念頭に新事業を準備される意識が欠かせません。
強く永く…成長発展を続けていくためには、いずれは避けて通れない分水嶺だからです。
そうすれば、お客様からはその市場の雄として、堅実で地に足の着いた企業として尊敬と敬意を集め、その敬意が売上利益をもたらすことにつながります。
潮目による事業機会が埋まらないうちに早く参入…といったことよりも大切なのは、自社のやるべき事業にじっくりと取組み、考えて準備して、まだ誰も「やれてない事」の領域に事業を持ち上げることです。
新事業の浮上には、時代の潮目に乗った「やってない事」も欠かせない要素ではありますが、独自性高く豊かな成長発展を築いていくために大切なことは、いつの時代も「やれてない事」の方だということを常に意識しておくことが肝心です。
御社の新事業は「やれてない事」を目指していますか?
そのために、挑戦すべき「やれてない事」を決めていますか?