【第191話】売上だけでなく利益性を高めるための思考と行動
出張先のホテルで朝食をご一緒しながら、「動けば何か出るよね」と仰るのは、外資系IT企業の日本法人の社長。
新たなビジネスモデルを引っ提げて日本に切り込み、業績を伸ばされている経営者の一言ですから、有言実行というか知行合一というか…、改めて「行動」の大切さを思いながら、ゆっくりと朝食をご一緒させていただきました。
ですが、よくよくお話をお聞きすれば、「そりゃ当たるよな~」と、聞いているこちらがニヤけてしまうほど秀逸な戦略をお持ちです。
実は、やみくもに「行動」しているのではなくて、よくよく考えてから「行動」されています。戦略という考え方のレベルで優れているから、「行動」の結果、好業績というご褒美を手に入れているのです。
業績を伸ばす経営者に共通しているのは、「行動」する前からすでにある程度勝っているという点です。こう動けばこうなるはずという仮説が当たっているので、「行動」が結果に結びつく可能性があらかじめ高いのです。
業績を伸ばすということを考えるにあたって大切なことがあります。それは「売上を向上させることも大切だが、売上を向上させたからといって利益が増えるわけではない」ということです。
経営の実務において、売上を向上させることと利益を向上させることは必ずしも一致しません。
受注のために値引きして売上を向上させながら利益を減らした、大口受注のために厳しい納期をのんだことで売上を増やしながら利益を減らした、売上を増やそうと設備投資したが売上の増加が費用の増加に追い付かず利益を減らした…。
こういった状況に陥って、結果だけ見た人に「考えてないね」などと言われれば、ムッとするお気持ちは分かります。ですが一呼吸おいて考えてみてください。
売上主義の経営というのは、勝負に「行動」から入りがちです。商品があればそれを販売する人数を増やしたり行動量を増やしたりします。あるいは、新たに売れそうな商材を探すためにあちこち飛び回ったりすることもあるでしょう。
この「行動」の一番の問題は売上を創ろうとせず探そうとしていることです。
確かにこういった「行動」で売上が増えることもあるでしょう。ですが、思い返してみていただきたいのですが、それは利益性が低く続かない売上だったのではないでしょうか。
なぜそう言えるかといえば、その理由はとても簡単です。その売上は、どこかで売れているものを持ってきているだけだったり、低価格で売ったりしているだけだからです。
要は、「自分で考えて創った売上」ではないのです。このため「思考」レベルで繁盛の理由に理解が及んでおらず、よって再現性が低く続かないのです。
売れそうなものを探すとか、買ってくれそうな人を探す…、これも考えていることになるのでは、というご指摘が聞こえてきそうですが、これはあくまでも、どう売上を探すか…という手段ベースの話でしかなくて、利益を生む根本部分に意識が及んでいません。そして、何と言っても商売の本質である「お客様」に意識が向いていないという意味で「考えてない」も同然なのです。
利益主義の経営というのは、勝負に「思考」から入ります。お客様が原価以上の価格で買ってくださるような付加価値を考えることから入ります。付加価値を創ってから売るので、売れさえすれば利益が出ます。
つまり、利益主義の経営は「思考」レベルに意識を置くため再現性が高く“負けにくい”のです。毎年5%のプレイヤーが消えていく経営の世界で“負けにくい”ことを“強い”と言います。
売上は「行動」によって生み出すことができたとしても、利益は「行動」だけで生み出すことはできません。「行動」に先立つ「思考」的準備によって、これから…が決まってしまうのです。
売上よりも先に利益を考えていますか?
「行動」する前に「思考」から入っていますか?