【第190話】新製品開発を成功させるために欠かせない目標意識の持ち方
某製品分野でアジア圏トップシェアを誇るとある製造業は、全体の2割ほどを占める新製品が利益のほとんどを捻出しているという収益構造になっています。
逆に言うならば、8割の既存製品は売上にはなれど利益にはなりにくいということですから、新製品のコモディティ化、陳腐化が早い製品市場で戦っているということです。
そういう製品市場、収益構造ですから、新製品の開発スピードが利益性に大きく影響を及ぼします。
よって、同社でも新製品開発の割合が経営目標の一つとして掲げられ、その目標に向かって挑戦されていますが…、当然のことながら「新製品」と呼べるような製品が次々と生まれるはずもない中で、お客様の視点に立った開発目標に向かって邁進されています。
新製品開発にあたっては、何を開発しようとしているのか…? いわば新製品開発の目標意識の持ち方はビジネスの成否を分かつ極めて大切なことです。
「えっ、そんなの分かってるよ」という経営者や開発技術者の方、本当に大丈夫でしょうか。わざわざここでお聞きしているのには理由があるということです。「〇〇という新機能を搭載した××装置」といった答えをお聞きするためではないのです。
では、同じことについて少し違う角度から質問します。「お客様が買うのは何ですか?」と。また、その答えも「〇〇という新機能を搭載した××装置」でしょうか。そうではないからお聞きしています。
足りてる時代、この前提に立てば、モノを売ろうとするような開発戦略・販売戦略というのは極めて愚策だということです。
「でもウチは製造業だから…」と悲観されないでください。そういうことではなくて、「モノだけで売ろうとするビジネスの意識に無理がある」ということです。
お客様はモノを買うのではありません。今までとは違う新しい“結果”が欲しいのです。となれば、新製品は「その欲しい“結果”を手に入れるための新しい方法」であることが売れる条件として欠かせません。
まさに、これこそが商売を繁盛させていくために欠かせない開発「目標」の条件という訳です。
例えば、体重計は「健康管理」を売っています。自動車の損害保険は「事故解決」を売っています。ゴルフのスコア記録アプリは「スコアメイク」を売っています。
すべて、新たな“結果”を手に入れるための方法・メソッドとして販売されていることがお分かりいただけるものと思います。
永く商売を続けているほどに、自分たちが本当は何を売っているのか…。実はよく分かっていなかったりすることもあります。
つまり、新製品・新サービスの開発にあたり、「開発目標」が「お客様が欲しい“結果”」になっていることが極めて大切なのです。ここに意識が及んでいますか…?と、先の質問ではお聞きしていたのです。
足りてる時代、製品開発戦略は同時に極めて優れた販売戦略でなければなりません。昔のように、開発技術者が技術トレンドを取り込んで製品開発・製品更新を行って、それを営業が説明して売る…といった、足りない時代の意識でビジネスの成長発展を期待できる時代ではなくなったということです。
さらに、「お客様が欲しい“結果”」を実現することに対して「自社の強みを使った方法」であることも大切です。その方法論の先駆者としての地位を守り育てていくことも欠かせないからです。
そのためには開発・製造・営業が、開発目標である「お客様が欲しい“結果”」の開発に向けて一体的に取り組んでいくことが欠かせませんし、その意識が最も必要なのはみなさま経営者に他なりません。
モノの開発に終わるか、お客様の“欲しい”に応えるか…、難しいと分かっていたとしても開発目標をどこに据えるか…、経営者の本気が問われています。
新製品の開発目標は「お客様の欲しい“結果”」に仕上がっていますか?
ご提案する方法論は御社らしいものになっていますか?