【第177話】社長の真価が問われるビジネス選択の判断軸
「社員より社長の方が忙しい会社なんて絶対に継ぎたくない」。高校生の頃にそう言っていた同級生の彼は、今、御父上亡き後、その会社を引き継ぎ社長となり、立派に成長させています。
社長という方々と仕事をしていてつくづく思うのは、「社長とは職業などではなく、生き方である」ということです。法人というバーチャルな法律上の人格に、生き物としての命を吹き込むのは、社長ご自身の生き方、“意志”…ということです。
これを逆に言えば、“意志”を宿していない経営というのは、何か中身はあるみたいだけどスライムみたいなもの…。ですから、何にでも変われてしまいます。こうした状態であれば、経営はどうなるか。
当たり前ですが、「こんな仕事あるんだけどやらない?」、「この仕事、この金額でやってくんない?」、「値引きだったの分かってるんだけど、また前の金額でやってくんない?」となっていきます。これはビジネスにとって、極めて恐ろしいことです。
というのも、お客様の方で仕事のカタチを決めるため、「これをこの値段で」となり、値付け権を失っていくからです。そして時間が経つにつれて、売れるけど儲からない…になっていってしまうのです。
これは、単純な原理によるものです。“意志”による働きかけの結果としてシゴトを生んでいるのではなく、先にどこかに仕事があって、それを代わりにやる仕事だからです。
こうして働いているうちに、自分たちが何屋なのか、何者なのか、何のために働いているのか、実は生活のため…、になっていってしまいます。そんなこと経営者として人には言えませんから、日本を元気に…とか妙に壮大な意志表明になってしまう訳です。
“意志”不在の経営が永い目で見てどうなるか、あくまでも因果関係という実に単純な話しをしています。“意志”を宿していない経営の運命というのは、最初から決まっていて、時間だけの問題なのです。
だからこそ、弊社では、“意志”を宿した社長らしい表現型、フェノタイプなものであることを事業構築の絶対条件と考えています。
ところが、「“意志”を宿す」というのは、簡単そうにも聞こえてとても大変なことです。それもそのはずなのです。すでに永い会社ともなれば、新たに“意志”を示せば、それに合わないシゴトが来なくなる、よって売上が減る…ということでもあるからです。
ですが、これはハッキリと断言します。「経営を高めてきた社長はこの“意志”表明のプロセスを必ず経てきている」と。
「売上の3割もあったけど、その仕事を辞めた」、「数あった事業を〇〇に一本化した」、あるいは「その意志の下でやるべき新事業に進出した」といったお話は枚挙に暇がありません。
では、こういった“意志”表明の結果、すべてが成功しているのか…と言われれば、実は「???」です。それを成功させるための大切な共通点、意志表明に欠かせない判断軸があるのです。
その答えを先にお伝えしておきましょう。「“意志”形成に、能力・技術の制約を課す」ということです。もう少し補足すれば、事業の経営というのは必ず方法論を伴います。その方法論の側に立って、得意なやり方から、ご自身の“意志”を形成するということです。
これは、極めて厳しいアプローチでもあります。言い換えれば「これまで努力もしてこなかった立ち位置から“意志”を語るな」ということでもあるからです。“意志”を語るには「これまでの努力」という名の資格が要るのです。それを無駄にしないためにも“意志”を宿す必要があるともいえます。
偉大なる意志というのは、自分一人の人生時間だけで積み上げていけるほど薄いものではなくて、むしろ多くがこれまでに蓄積されてきてきたものです。その先をどう積んでいくか…、これこそが我々が表明すべき“意志”の根源といえるでしょう。
生き方として“意志”を表明していますか?
その“意志”に従ってシゴト創りに挑戦していますか?