【第172話】世の中に役立つ新事業・新製品づくりの条件
「納品に一週間必要と思っていた製品が3日で届いたら」、「これまで金型で作っていた部品が金型不要で作れたら」、「油が不健康だと思われている中で健康になる油があったら」…。
いかがでしょうか。これらは、それぞれ実際にとある企業が成し遂げてきたことです。そして、私たちの毎日というのは、こういったビジネスに支えられています。
世の中のビジネスというのは、脈々と「進化」してきました。あの頃、小さいとされていたウォークマンも、今では大きさ指先ほどの音楽プレイヤーになっていますし、今や欲しいものはワンクリックで翌日には届きます。
とはいえ、新事業や新製品と呼ばれるモノも、全くのゼロから創り上げられているということはありません。
ここで、勘違いして頂きたくないのですが、「ゼロから創り上げられているのではない」という意味は、断じて誰かのビジネスや製品をパクッてるということではありません。
事業の素となる要素というのは、元素、力、法則…といった、地球誕生の古来から、この世に既に存在していて、それを人間が使えるように取り出して、ビジネスに応用しているに過ぎない――、という意味です。
もう少し言い方を変えれば、私たちはこの世の中のことを分かる量が日進月歩で増えているということです。未知を減らしているのです。
このような前提に立てば、ビジネスとして実現できることが増えるというのは、既にある法則の応用といえます。よって、ビジネス進化の核は「応用力」なのです。
稀に、技術の未熟さを技術の否定と結びつける論調を目にすることがあります。ですが、こういった方々というのは、技術を使ったビジネスの最前線にいたことがあるのだろうかと疑問を持たざるを得ません。
なぜならば、こういった論調というのは、技術やビジネス進化の本質である「未知への理解と応用」を否定することだからです。
さて、少し話が逸れましたので元に戻れば、ビジネスの進化とは「未知を既知にしていく」ことであり、売上・利益は「既知となった法則の応用」によってもたらされます。
そして、事業家がなすべきことは、「この既知をお客様のための新たな応用法」に仕立てることです。これこそが、新事業・新製品が“新”たる所以です。
ですから、先行するビジネスを研究するというのは、そのビジネスの表面的なやり方などではなくて、そのビジネスが立脚している法則に着眼することが大切です。
単にやり方をパクれば単なるサル真似で進化への貢献は皆無ですが、法則を学び応用すれば、それは進化に貢献すると同時に、紛れもなく御社独自の新事業・新製品と呼べるものです。
とはいえ、事業経営の日常で、世の中の新法則を解き明かしていく…、などという芸当は困難を極めます。
ですから、現実的な目標意識としては、新事業・新製品の開発では、「常識を超えていくこと」を目指してはいかがでしょうかとお伝えしています。
つまり、「既知をもう一ひねりして、お客様の常識を超えていくことを目指しませんか?」ということです。
我々は多くを未だ知りませんが、少なくともこれまでの経験から、ビジネスとして「滑り出しの良い新事業や新製品の法則」を見出すことは可能です。そして、それが何かと問われれば、確信を持ってこう答えます。
「常識の更新」すなわち「“新常識”の構築」です、と。
これは大いなる成功法則であり、ビジネスの歴史そのものです。今あるすべての常識は超えていけるはずのものです。その常識の数だけビジネスチャンスはあるのです。
今の常識を超えていくことを目指す意識が、次の売上・利益をもたらします。
やり方レベルに留まることなく法則に着眼していますか?
御社の新事業・新製品が世に問う“新常識”は何ですか?