【第163話】中小・ベンチャー企業経営で最も大切にすべき基本戦略
御社の経営で今最も大切にしていることは何ですか?
社運を賭けた新製品を何とか完成させること、新サービスを次々とラウンチして売上を拡大していくこと、引き継がれてきたこの暖簾を守っていくこと…。
あるいは、従業員の定着に向けて満足度を上げること、追加の借入を抑制して借入金の返済を優先すること、内部留保を厚くしながら投資を抑制して手元資金に余裕を持つこと、人手不足を見越して業務のIT化を進めること…かもしれません。
いずれにしても、こういったことはどれも因果関係が複雑にからみ合った問題で、一朝一夕に目の前の雲が晴れていくことはありません。
言ってみれば、経営者として経営に携わっていく以上、目標を達成することに向けた挑戦はひたすらに続いていきます。
「ひたすらに続いていく」と言われると、何やら苦行のように聞こえてきますが、実はこれこそが経営者の幸せでもあります。
その理由はとても簡単です。「挑戦できる状況にある」ということ自体が極めて重要だからです。経営者にとって挑戦の道を絶たれるほど、辛くて悲しいことはありません。
初めてお会いした瞬間に優しさと同居する“凄み”を感じる経営者方に共通するのは、一度倒産を経験されていたり、莫大な債務超過を立て直していたり…、そういった危機を乗り越えてきた方ならば、その心情が思い出されることと思います。
今、自分に挑戦権が与えられていることに対する幸せと、そこで結果を出そうとする執念が入り混じって、そんな“凄み”を醸し出します。
大切なことなので改めて説明すれば、「経営は“続ける覚悟”と引き換えに、その挑戦権を得ている」という構図にあるということです。
このことを前提として考えるならば、当然のことながら、続けていくためのことを経営計画の基礎に据えなければなりません。
ところが、事業が当たった、当たらなかった…、ギャンブルかのごとく捉えている経営をお見掛けすることがあります。
「私はこれまでに100を超える事業をやってきた」とおっしゃった社長もいらっしゃいました。
この社長の経営がどういう結末になったかにご興味がおありですか? それはご想像のとおりですから、お伝えする必要もないでしょう。
つまり、事業を単発でとらえると経験が蓄積されず、いつまで経っても組織能力が向上しないため、低収益な割に混戦模様のビジネスに階段を降りていくことになります。
結果、いつかどこかで手詰まりを起こします。これはアルゴリズムです。法則ですから、いつも同じ結果にたどり着くのです。
一方で、一段上の能力レベルを必要とする仕事に挑戦していく経営は、これとは異なる道を歩みます。新たな挑戦はそれ以前の挑戦を糧にしています。
そこで得た能力を応用して次の売上につなげていたり、やり方を調整して新たな方法に高めていたりと、常に蓄積を伴っており、ゼロからの挑戦ということはありません。
経営が続くのは、とても簡単に言えば、続けることを意志として持っているからです。このことから、経営にとって最も大切なのは「深追い戦略」と呼ぶべきものです。
あきらめずにそれを絶対に続けていく、何としてもご自身で定義した成功レベルまで持ち込む…。「深追い戦略」は基本戦略であると同時に、時間を味方につける最強の戦略でもあるのです。
御社の経営計画は「深追い戦略」になっていますか?
そして、時間とともに強くなっていきますか?