【第162話】本物の成長を歩む路線選択の原則

事業規模や売上・利益を拡大していこうとする際、まずどういったことを考えますか?

 

「まず」と言われれば、それは既存事業の販売拡大になるでしょうから、商品ライン・アイテムを増やしたり、販売チャネルを増やしたり、営業地域を拡げたり…といったことになるでしょう。

 

しかし、こういった取り組みは、確かに新しい取り組みではありながらも、概ね通常業務の範疇を超えていないと言えなくもありません。

 

多分ほとんどの企業が、今期の経営計画には載せてありながら、毎年、ちょっとずつしか進まないために、会議では「本気でやってるのか」、「最近の社員は勉強しない」、「遅い原因は何なんだ」といった小言?が繰り広げられているのではないでしょうか。

 

事業の拡大を考えた時に、経営者には大きく二つの異なる路線があります。一つは「事業家的拡大」、もう一つが「投資家的拡大」です。

 

「事業家的拡大」というのは、自社のコア能力や技術といったものを拠り所に、それを事業として成り立つようにしていくことで本業と呼べる範囲を拡大しながら、売上・利益を伸ばしていくタイプの成長拡大です。

 

一つの打ち手が次の成長の布石となり、試行錯誤しつつも、まるで道を描くかのように成長の軌跡を描いていきます。既存の事業領域が新事業と重なりながら、全体として高まりつつ拡がっていくイメージです。

 

多くのモノづくり企業やエンジニアリング企業、歴史ある職人的サービス業…の成長路線といえるでしょう。

 

一方で「投資家的拡大」というのは、投資採算が見込めそうとあらば、既存事業との関係性をそれほど重視せずに、事業を手掛けることで売上・利益を拡大させようというものです。

 

特に小さな異なる事業を複数手掛けるような経営スタイルは、小さな事業の複合企業体という意味でマイクロコングロマリットと呼ばれます。

 

この場合、ご自身で事業を握ってハンドリングしていくというよりは、それを実行できる人を雇って日々の運営をしていくことになるため、概ねビジネスオーナーといった立場で経営を進めていくことになります。よって、事業経営が極めて投資家的です。

 

また、この経営スタイルの特徴は、技術や能力の獲得・向上で地味に泥臭く…というよりは、むしろ短期で手早く儲かる仕組みの購入、おカネ集めのテーマに近い感覚です。

 

経営者は、「事業家的拡大」でも「投資家的拡大」でも、お好きな道を選ぶことができます。

 

ですが、いかがでしょうか? ご存知の経営者で「投資家的拡大」で“本物”と呼べるような成長発展を遂げられている方はいらっしゃるでしょうか?

 

確かに、経営が500億円規模を超えていけば自ずと成長路線は「投資家的拡大」になっていかざるを得ません。ですが…、それを今やりますか?ということです。

 

社会的役割・意義のために働くか、おカネ集めのために働くか…。経営の根本をなす大変重要な考え方です。

 

大隈重信公はこう言っています。「人間が生きているのは、社会の利益のために存在するということだ。ただ生きているのではつまらない。」

 

お客様を利するための経営か、ご自身を利するための経営か…。この意識の違いは、お互いに相いれないところがあるため、成長拡大を目指す上でどちらの路線を選ぶかは、意識して考えるべきとても重要な選択なのです。

 

御社ではまず「事業家的拡大」を目指していますか?

お客様の利との関係で、自社の売上・利益を考えていますか?

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