【第161話】負けが込んできた時の競争への対処姿勢
御社はコンペに参加したことがありますか?
「ウチはコンペなんか参加したことはない」という経営者もいらっしゃるかもしれません。ですが、今日の仕事があるのは、例えコンペという形式ではなかったとしても、「御社にお願いしたい」という何らかの理由があってのことです。
コンペには大きく二つのタイプがあります。一つ目は課題解決力やデザインなど、提案内容を競う価値競争タイプのコンペ。もう一つは、すでに仕様が決まっていてそれを最も安く実施してくれる企業を選ぶ価格競争タイプのコンペです。
毎日の仕事を振り返ってみれば、自社が受注するというのは、「価値」競争と「価格」競争の“合わせ技一本”で受注していることに気が付きます。
「欲しいモノなので多少高く感じるけどコレがいい」であったり、「これがこの価格だったら安い」といったことです。「価値」と「価格」見合いの受容範囲で購入が決定されています。
ここで、豊かな成長発展を目指す上で重要なことは「お客様にどちらの競争軸で知られているか?」という点です。
もし「価値」ではなくて「価格」、すなわち“安さ”で知られているとしたならば、断言できることがあります。
それは、「長い目で見て、御社の経営はいずれ行き詰まる」ということです。
なぜ、そう断言できるのかといえば、とても簡単なことです。それは「価格競争の勝者は一人しかいない」ということです。
もしそうであるならば、御社は価格で勝ち続けて、ひたすら勝ち続けて、最後の一社になって初めて御社らしい豊かな利益を手にすることができるという、なが~くてサバイバルな道のりの途中にいるということを知らなければなりません。
もし、「△△円にしてくれるなら、あなたのところから買いますけど」と言われ、「分かりました」といって受注したことがあるならば要注意だということです。御社の競争軸が「価格」になってしまっている証拠だからです。御社の商品・サービスがコモディティ化しつつあり、そのままで売り続けようとすること自体に無理が生じ始めているのです。
「お客様のためだから…」というのは本当でしょうか? 「値引きさえすれば売れるんだから」などといった考えがいつまでも通用するでしょうか?
経営研究の世界で“競争のジレンマ”として知られていることがあります。それは、「競争の目的は競争しないこと」という逆説を意味します。
競争を「価格」で見てしまえば、何やら未来が疲弊したものに思えてくるでしょう。競争のジレンマは、価格競争に負けたライバル企業を吸収合併しながら大きくなっていくといった一者収斂、体力勝負の業界編成的な成長プロセスとして現れてくるでしょう。
一方で競争を「価値」で見れば、見えてくる世界がまるっきり違ってきます。多様な商品・サービスを欲しい人が適正な金額で買う。様々な企業がそれぞれ独自のフィールドで、もっともっと創意工夫を重ねていく――。
目指すのはこんな世界ではないでしょうか。そうであれば、まずは目指すことから始めなければなりません。御社が「価値」競争の土俵で豊かな成長発展を実現していくために大切なことは、競争の本質は“創意工夫”であると考えることです。競争は他社との関係ではなくて自社の問題なのです。
では具体的にどうすれば良いか…。それは「価値」で知られてから「価格」の順番で交渉が進められるように準備することです。
そのためには、御社の工夫努力を、お客様の「価値」に転換してから世に放つというもう一段の下準備を進めることが欠かせません。ですから「価格」の表示は常に最後です。
「価値」競争と「価格」競争の“合わせ技一本”をどっちの順番で取るのかで、御社の成長の道は極めて異なったものになっていきます。「価値」で技ありを取ってから「価格」の順番で一本を決めるという順番が大切です。
競争とは自社の問題だと考えていますか?
御社の商品・サービスはお客様の「価値」に転換されていますか?